究極のデザイン・メソッドーー私たちが資本の支配から解放されるために!
内部崩壊しつつある資本主義社会を解体させ、新たな社会を作り上げる方法とは?
現在の私たちの生活の根底にある、資本主義社会の本質的な矛盾。これを明らかにし、克服に必要な基本的プロセスを考え、資本主義以後の近未来社会のラフスケッチを描き出す。
著者 | 野口尚孝 |
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発売日 | 2025年5月27日 |
ページ数 | 240 ページ |
定価 | 2,000円(+税) |
判型 | 46判並製 |
装幀・造本 | 藤巻亮一 |
ISBN | 978-4-7744-0862-0 |
目次
はじめに 15
第Ⅰ部 私たちの生活がいま直面している状況 19
第一章 誰のための「経済成長」なのか? 21
1 「便利で快適なモノ」に溢れた生活がもたらしたもの 21
(1)環境の汚染と破壊が止まらない
(2)「消費者のニーズ」は本当に生活者が生み出したのか?
2 持続的生活形態の崩壊 27
(1)崩壊するコミュニティー
(2)何も信用できない「騙しの社会」
(3)格差拡大
第二章 先の見えない社会にあって考えねばならないこと 33
第Ⅱ部 資本主義社会とはどのような社会なのか? 35
第三章 「資本」はどのようにして誕生してきたのか? 37
1 原始共同体から古代社会が登場するまで 37
2 交易とそれに必要な貨幣の登場が生んだ「資本」の芽 40
(1)王権と商人資本家が結びついた近世的国家の誕生
(2)富の獲得への欲望を海の彼方へ拡大した「大航海時代」
第四章 資本家がモノづくりを支配することで「自分の足で立った」資本主義社会 45
1 生活を生み出す手段を奪われ自らの労働力を売らねば生活できなくなった生活者たち 45
2 「労働者階級」となった生活者たちの生活 47
3 資本拡大のための生産過程の合理化としての「産業革命」 49
(1)職人の手にデザインを取り戻そうとしたW・モリスの運動
4 資本家の頭脳の一部を代行する頭脳労働者の登場 51
(1)事務労働者
(2)設計技術者
(3)応用美術家
(4)自らを労働者階級とは思っていない頭脳労働者たち
5 労働力商品の育成機関として登場した資本家的マスプロ教育システム 55
6 社会的生産物の全てが資本家による商品の集積体となった社会 56
第五章 マルクスが明らかにした資本主義経済の基本的仕組みとその矛盾 57
1 価値とは何か? 58
(1)ヒトの労働の成果としての「価値」
(2)労働過程における「死んだ労働」と「生きた労働」による価値形成過程
(3)モノに対象化された労働成果の種類とその意味
2 資本主義的「価値」の矛盾とその根拠 66
(1)賃労働と資本の関係が意味するもの
(2)資本の法則が人格化された資本家たちの振舞い
(3)資本主義的「合理化」がもたらす過剰資本の形成という矛盾
第六章 マルクス以後の資本主義社会の展開 72
1 独占資本に支配された国家間で国益を競う時代 72
(1)株式会社制度の普及と金融資本の支配
(2)金融資本に支配される国家財政
2 「帝国主義国家」間での第一次世界大戦とそれがもたらした結果 75
(1)第一次世界大戦後のヨーロッパの変化
(2)史上初の社会主義体制を目指したロシア革命とその挫折
3 新興資本主義国アメリカでの「新しい資本主義」への胎動 78
(1)フォード方式がもたらした大量生産技術
(2)買替え需要の促進を担うインダストリアル・デザイナーという職能の登場
4 一九三〇年代に訪れた資本主義体制の危機 83
5 国家主導型資本主義経済体制の登場 85
(1)「ニューディール政策」とケインズ理論
(2)独裁者の「リーダーシップ」に未来を託そうとした国々
6 ロシア革命を共産党独裁の国家主義に変貌させたスターリン 91
7 当時の全体主義的国家を背景で支えた文化的思想 93
8 三つの異なる国家主導型体制間の衝突として起きた第二次世界大戦 96
第七章 二〇世紀後半の「東西冷戦」時代 97
1 戦後西側世界に拡がったケインズ型資本主義経済体制の生活様式 97
2 アメリカ型「階級の見えないマス社会」の登場 100
3 イギリス的国家主導型資本主義体制とその矛盾 102
4 一九五〇年前後から始まった「国家主導型デザイン」の流れ 104
(1)政府がデザイン振興政策に乗り出したイギリスや日本
(2)ソ連圏での生活とデザイン政策
5 「新自由主義」による「小さな政府」論の登場 108
第八章 東西冷戦体制の崩壊とグローバル資本の世界市場支配 110
1 資本主義経済体制化した中国の世界市場参入と資本のグローバル化 111
2 国による賃金格差を利用して成長するグローバル資本 113
(1)「生活水準の差」とは何か?
(2)国家間の格差化を推し進めたグローバル資本
3 「先進資本主義国」内での生活者の格差拡大 116
4 資本主義的産業革命の最終段階としての「AI革命」がもたらすもの 117
5 グローバル資本の利害対立によって再び訪れた世界戦争への危機 119
第九章 現状打開への試み 121
1 国連による“Sustainable Development Goals”での提案 121
2 セルジュ・ラトゥーシュの「脱開発」論 122
3 ジェイソン・ヒッケルの「資本主義の次の社会」論 127
第十章 いま必要な、どう資本主義的矛盾を克服した社会を
生み出すかを考える「デザイン思考」 130
第Ⅲ部 すべての人が持っている「デザイン思考力」とは? 131
第十一章 人類は「デザイン思考力」をどのように獲得したのか? 133
1 人類のモノ(人工物)づくり行為がもたらしたもの 133
(1)生命体の登場がもたらした「内部」と「外部」の区別
(2)内部と外部を橋渡しする「媒体」としての道具の誕生
(3)「目的・手段関係思考」を生んだ「モノ(人工物)づくり」
(4)意図の外化とそれによる他者とのコミュニケーション媒体としての人工物(モノ)
2 デザイン思考の基本構造 139
(1)マルクス労働過程論にみるモノづくりの論理とデザイン思考
(2)ヴィゴツキーの「思考単位」説
(3)問題解決思考のコアとしての「デザイン思考単位」
(4)デザイン思考が複雑化した段階での構造
第十二章 「時間の先読み思考」としてのデザイン・プロセスの特徴 152
1 問題の把握 152
(1)問題の認知から「問題像」の表出まで
2 解決目標の設定とその達成手段の探索プロセス 154
(1)目的・手段関係の探索
(2)目的・手段関係の階層的連関構造の把握
3 試行錯誤的な解探索過程 158
(1)目的・手段連関の探索における「メタ目的」の発見
4 探索過程を方向付ける「制約条件」の役割 161
(1)物理的制約
(2)経済的制約
(3)社会倫理的制約
5 機能の実体的イメージ化としてのデザイン解の発想 163
6 デザイン解への評価の持つ歴史性 164
(1)本来の目的と手段の関係が逆転している資本主義的デザイン思考
(2)デザイナーによる「価値創造」とは?
第Ⅳ部 私たちが資本の支配からどう抜け出すかを考えるためのデザイン思考 169
第十三章 まず問題の全体像を把握する 171
1 資本主義社会の経済的構造とその基本的矛盾 172
2 修正された資本主義経済体制とその矛盾 176
3 資本主義的社会観(イデオロギー)の虚偽 179
(1)「自由で平等な民」とは一体誰なのか?
(2)「国家」とは何か?
(3)「国益」の手段とされる側の「国民」
(4)資本主義国家における「個と全体」との矛盾した関係
第十四章 資本主義の矛盾を克服した社会の実現のために必要な
基本的目標と方法を考える 187
1 〈社会経済体制〉での目標(目標1):
すべての労働者が資本の支配から解放され主体的に働ける社会の実現 190
(1)目標1の実現に必須な方法(方法1a):
労働者階級が社会的に必要な生産物を生み出すための生産手段を資本家階級から取り戻すこと
(2)目標1の達成に必要なもう一つの方法(方法1b):
すべての労働者たちによる民主的な自治組織の結成
(3)方法1aおよび方法1bによって可能となること:
見通しA1:価値規定による社会的必要労働時間と剰余労働時間の区別の明示化
見通しA2:労働生産物の価値規定による合理的な分配
見通しA3:剰余価値部分の社会共有化とその使途の明確化
見通しA4:労働者の民主的合議に基づく社会的に必要な部門への労働力の適正な配置
2 〈自然環境問題〉での実現目標(目標2):
人類が自然の一部であることを踏まえた持続可能な世界の実現 210
(1)目標2の実現に必要な経済的条件(方法2):
経済計画へのマルクスによる「社会的総生産物の再生産表式」の適用
(1)すべての見通しAの実現と方法2の計画的適用によって可能となること:
見通しB:必要なモノを必要なだけつくることで成り立つコンパクトな持続可能社会の実現
3 〈国際関係〉の実現目標(目標3):
人類同士の戦争をなくすことができる社会の実現 217
(1)目標3の実現に必要な方法(方法3):国境を超えた労働者階級の連帯組織の構築
(2)見通しA、B、の実現、および方法3の適用によって可能になること:
見通しC:自律的地域共同体とその連合体による「国境なき連帯社会」の構築
4 見通しA、B、Cが実現されることによって想定される社会の姿 224
(1)社会的に必要な労働が労働者主体で行われる社会
(2)労働での自己疎外感を過剰な消費で補おうとしなくとも充実した生活が送れる社会
(3)労働者=生活者自身による主体的な生活デザインで成り立つ共同体社会
(4)国境を超えた労働者の連帯により「国家」のため他国の人々と殺し合わずに済む世界
第十五章 まとめ:目標実現へ想定される基本的プロセスの図式化 230
おわりに ここから始まる私たちの歴史創造へのリアルなデザイン思考と実践 233
参照文献 235