皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

月光92号

特集 一九四五年八月

短歌という詩型の歌う主体は、宿命的にこの〈私〉である。私は、この一人称詩型短歌の〈私〉を逆手にとり、焼け死んでいった死者たちの〈私〉に降り立ち「不特定多数の〈私〉」の、その痛苦と悲嘆の数々を短歌をもって体験してゆくのである。ーー福島泰樹

歌人・福島泰樹主宰の「月光の会」が発行する短歌雑誌。今号の特集は、終戦から八〇回目の夏を迎える「八月」。
「桜木が燃えていますわまっくろにこげてわたしが揺れていますわ」「幼年の夢の記憶のさみしくば花は縊れて落ちてゆきにき」(福島泰樹)。戦争の記憶が遠いものになり、排外的な言動がおこりつつあるなかで、短歌が果たす役目とはなんだろうか?
そのほか、会員による連載、短歌作品など多数。

編者 福島泰樹(主宰)他
発売日 2025年9月12日
ページ数 104 ページ
定価 1000円(+税)
判型 A5判並製
装幀・造本 藤巻亮一
カバー写真・
イラスト
佐中由紀枝
ISBN 978-4-7744-0867-5

目次

巻頭作品 ギンヤンマの歌 福島泰樹 4
夏の飲食  大和志保 6
家書家伝 竹下洋一 8
特集 一九四五年八月 10
評論一 あおみどろの家 山本 茂 11
「八月」の断想 戦後80年に思うこと 大林明彥 15
八月の石 福島泰樹 20
短歌一 八月の墓標 小淵明洋 26
八月の死者と生者 臼井敦子 28
八月のリレー 池田慈雨 30
戦後八十年八月のレクイエム 岡部隆志 32
評論二 八十年前、わたしたちの家族は「何」を守ったのか 綿田友恵 34
短歌一 浚渫船 楠本夏菜 38
短歌二 『水の声』聴け 髙嶋和惠 40
記憶をつむぐ 櫻井真理子 41
無音のアッシュ 窪田政男 42
猿人 山本 茂 43
Iʼm here. 五十嵐博信 44
「神 空にしろしめす すべて世はこともなし」 夏野ひぐらし 45
八月とわたし 高橋凜凜子 46
八月の祈り 久慈博子 47
八月がくるたびに 来栖微笑 48
戦災孤児の歌 杉山志保 49
八十年の平和 舛山誠一 50
草青みたり 白井大治 51
知覧・萬世・沖縄 鏡 澄夫 52
われ突入す 香月秀夫 53
かわたれの庭 渡邊浩史 54
八月 またも巡る 中田 實 55
八月の朝子 潮 なぎさ 56
ヒロシマ・五月 綿田友恵 57
八月 岡本 康 58
八月の指 足立尚計 59
連載 わが稗史抄 第十五回 山本 茂 60
蚯蚓の戯言 16 歴史的現在を生きる—— 善麿・建・修司—— 大林明彥 62
テロルと虐殺と「私」 関東大震災朝鮮人虐殺を想起して—其の十二— 武藤雅治 64
短歌作品 自由への星 いのちの八月を詠う 重信房子 66
短歌時評 労働や若さを思う夏 潮 なぎさ 68
短歌三 白夜 尾松 亮 72
跫音 武藤雅治 73
景色は湿り 藤岡 巧 74
夏の静物 鹿野 氷 75
歳時記 竹村京子 76
8月の忘れもの 皆月ヒバリ 77
「拝啓 ドナルド・トランプ教皇猊下」  福間三九郎 78
「酸甘化陰」へ 鎌田圭一 79
「悪銭身に付かず」 (祖母の遺言) Akiko 80
母 (ある側面) 椎野礼仁 81
殉教者たちの終焉『百年揺詠』〈三〉 凛七星 82
天下三分の計の八月 大林明彥 83
連載 天神亭日乗 28 来栖微笑 84
月光シネマテーク60 青の陰画(1) 渡邊浩史 86
神保町のんしゃら日記 26 晴山生菜 88
コトバ数だけ数えうたの二十六 山崎春美 90
月光通信 93
月光歌筵Ⅰ 前号作品評 綿田友恵 100/ Ⅱ 大和志保 102
編集後記 104