皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

歌誌月光85号

特集 黒田和美賞とその歌人たち

六月のアート・フィルムずたずたに裁断されしままラッシュ・バックせよ
打たれたる頰のほてりを如月の風に晒せば匂ふジャスミン
立ち尽くす誇りあらばや風のなか一糸纏はぬ冬の木立よ
母として抱くらむ赤子はつなつの睡蓮すでに胸に色づく
月光を過りたる人一斉に揺れてゐるらむ尾花の向かう

(黒田和美五十首選より)

歌人・福島泰樹主宰の「月光の会」が発行する短歌雑誌。今号の特集では、黒田和美さんとその受賞歌人たちの歌業を振り返る。本賞は2013年、月光の会立ち上げの頃からの功労者であった黒田和美を顕彰して創設され、以来過去11回、14名の受賞者を輩出してきた。「黒田和美は、時代の決して主役ではなかった人々、その副次文化の創り手たちの行く末にこそ、六月の雨の挽歌を降らせたかったのである。それが、まるで自分の役割であるかのように、ごく自然に。」(福島泰樹「悲しみの言葉 黒田和美」より)そのほか、新鋭会員の作品を掲載。大和志保による短歌評論連載では、2024年3〜4月の短歌シーンを考察する。

編者 福島泰樹(主宰)他
発売日 2024年6月30日
ページ数 102 ページ
定価 1,000円(+税)
判型 A5判並製
装幀・造本 藤巻亮一
カバー写真・
イラスト
佐中由紀枝
ISBN 978-4-7744-0834-7

目次

巻頭作品
「大正十二年九月一日」以後 三 ホルマリンの歌 福島泰樹
家書家伝 竹下洋一
新鋭集
スタッカート 村上珠美
人形ぢごく 皆月ヒバリ
ゴムボート 楠本夏菜
虚妄 吉田裕幸
照り映ゆ 有泉
瑠璃色球の憂鬱 橘 世理
特集 黒田和美賞とその歌人たち  
悲しみの言葉 黒田和美 福島泰樹
黒田和美作品抄『六月挽歌』 他
黒田和美歌集『六月挽歌』の世界 竹下洋一
一糸まとわぬ冬の木立 『六月挽歌』再読  岡部隆志
受賞者 冨尾捷二/大和志保/吉田和子/磯村 健/窪田政男/髙坂明良/野口綾子
佐久間章孔/渡邊浩史/中田 實/川俣水雪/松野志保/重信房子/髙嶋和惠
短歌一
Kの肖像49 宮野克行
稲妻が連れ来るモノ 川崎秀三
辞表 山本 茂
決着 武藤雅治
前夜 綿田友恵
兎の足 千田桃子
フルーチェができるまで少し話そう 小田那津子
遺せしもの 来栖微笑
大地ボウボウ 藤岡 巧
ドライフラワー 夏野ひぐらし
四月飛行 鹿野 氷
鳩の空 小河内仁美
選挙におもふ 櫻井真理子
京都 さくら 高橋凜凜子
DANCE DANCE DANCE 五十嵐博信
関根正二とその周辺 矢澤重徳
連載
わが稗史抄 第八回 山本 茂
蚯蚓の戯言 9 〈なぜ生きるのか〉邦雄と泰樹と政男と隆 大林明彥
テロルと虐殺と「私」 関東大震災朝鮮人虐殺に関連して―其の六― 武藤雅治
短歌時評 触角と光、言葉の身振りについて(Ⅵ) 大和志保
短歌二 ACT3 明転連夜 髙坂明良
『Early80s の、或いは蒼の時代』〈一〉 凛七星
再生 晴山生菜
長距離ランナーの歌 一 鏡 澄夫
祭囃子に背を向けて 久慈博子
フクシマ1 福島県立双葉高校 杉山志保
唐十郎氏への手紙 菅原あこ
極夜白夜に 白井大治
墨田の川の渡し守 竿を握りて川をあちこち 福間三九郎
「お水大切」へ 鎌田圭一
近未来の葦 舛山誠一
生魂の歌 足立尚計
祀るは 中田 實
イルカ群れ飛ぶ 大林明彥
連載
月光シネマテーク54 あした花咲く庭で(19) 渡邊浩史
きょうの百葉箱 「通訳」を通した世界をどう見るか 潮 なぎさ
天神亭日乗 21 来栖微笑
神保町のんしゃら日記19 晴山生菜
月光通信
月光歌筵Ⅰ 前号作品評  窪田政男/ Ⅱ 綿田友恵
編集後記