奄美
月光叢書第3弾! 永遠の帰還者が滅びゆくものを詠う
とろとろと漆黒の闇に火の生れる
轟なるもの火のかたち見ゆ
樹木、昆虫、鳥類が鋭い暗喩となって戦後の日本を、滅亡に向かってひた走る現代文明を指弾してやまない。中田實の、滅びゆくものに向ける眼差しはひたすらにやさしい。(福島泰樹)
月光の会を長年支え続けた中田實が、父母のルーツである「奄美」を詠う第一歌集。
著者 | 中田實 |
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発売日 | 2019年10月8日 |
ページ数 | 208 ページ |
定価 | 2,000円(+税) |
判型 | 四六判上製 |
装幀・造本 | 間村俊一 |
ISBN | 9784774406848 |
目次
奄美
血脈/波紋/啓蟄/豊島/帰島
蒼氓
あかねさす駅/蒼氓/樹々の声/楽園/羽撃き
カンボジア
Kに/風の音/革命家/カンボジア
跋―轟なるもの火のかたち見ゆ 福島泰樹
あとがき
以下歌集より抜粋
昭和二十六年十二月三十一日曇天の横浜港 父は「日本」に降り立つ
総革の膝元までのコート垂れ累累続く死者の群れたち
分水嶺の左に流れ日本海へ 分かれの悲しみが滲む手の甲
北緯三十度線の国境よ荒海よ 密航者俺の眼に屋久島聳ゆ
両腕の肘より先の無き夢を ただ夢に見き哭いて見てゐし
炎天の蜘蛛の糸にぞ絡められ八月の蟬は風邪に揺らぐを
中田實(なかだ・みのる)
1953年 東京都荒川区に生まれ、17歳まで北区豊島に育つ
1975年 成城大学国文科入学 中西進先生、鈴木日出男先生に師事
1979年 「風土派」入会
1982年 成城大学大学院文学研究科修士修了
1984年 東京私学杉並学院勤務(当時は菊華高校)
1989年 「月光の会」入会 『季刊月光』6号に作品「理想円形」発表
以後『季刊月光』『文藝月光』『歌誌月光』に順次作品を発表
「月光歌会」「月光の会」幹事