歌誌月光80号
特集・関東大震災
古井戸に投げ捨てられた宗一の小さな首よあわれな首よ
大正十四年、政府は治安維持法を制定。国体変革、私有財産制の否定の運動に呵責ない弾圧を加えた。
関東大震災は、人々の意識にさまざまの変容をもたらした。
デモクラシーの嵐吹きまくる中、薩長以来の軍閥と非難され、無用の長物とみなされていた軍隊が、国民に一目置かれる機会を得たのである。関東大震災からわずかに三年八ヶ月、山東出兵はなされ、私達の父、母、祖父、祖母たちは戦争の時代を迎えるのである。
本年九月一日、私たちは関東大震災発生百年を迎える。
「大正十二年九月一日」福島泰樹より
歌人・福島泰樹主宰の「月光の会」が発行する短歌雑誌。今号の特集は、発生から今年で100年を迎える【関東大震災】。大正十二(一九二三)年九月一日午前十一時五十八分四十四秒、相模トラフ沿いの断層を震源とする大地震(M7.9)が発生。被害は、関東を中心とする一府六県に及び死者行方不明者十四万人、全壊焼失家屋は七十万戸、数百万の罹災者を出した。「流言蛮語」はなぜ起きたのか? 無辜の人々はなぜ虐殺されたのか? あれから100年を経た日本を、会員による短歌・論考で見つめる。
そのほか、重信房子による短歌連載「自由への星」第6回を収録。
編者 | 福島泰樹(主宰)他 |
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発売日 | 2023年8月25日 |
ページ数 | 120 ページ |
定価 | 1,000円(+税) |
判型 | A5判並製 |
装幀・造本 | 藤巻亮一 |
カバー写真・ イラスト |
佐中由紀枝 |
ISBN | 978-4-7744-0799-9 |
目次
短歌一
虚仮の轍 凛七星
夏の死 佐々木 譲
命ひびわれ 藤岡 巧
フェアリーテイル 大和志保
特集 関東大震災
大正十二年九月一日 福島泰樹
特集短歌 雪のマリア 高坂明良
百年といふ一瞬ののち 髙嶋和惠
映画「菊とギロチン」と鼻歌の 窪田政男
「天罰的思考」に抗する 岡部隆志
濁流に消えた母 ──堀辰雄の場合 山本 茂
関東大震災の記録を編集する 藤巻修一
特集短歌 ある姉妹 (関東大震災) 高橋凜凜子
永遠に夏 潮 なぎさ
ひそかに戦げ 夏野ひぐらし
篩われる運命 五十嵐博信
テロルと虐殺と「私」─其の一─ 武藤雅治
愛に殉ぜん ─金子文子「獄窓に想ふ」考 綿田友恵
星のゆくたて 「黒旗水滸伝」私考抄 渡邊浩史
短歌二 やさしい鬼 武藤雅治
タイピストの恋 山本 茂
昭和ノスタルジー 久慈博子
雨と指のバラード 椎野礼仁
本の象 晴山生菜
まぼろしの猫 小田那津子
ケセン語を聞く 櫻井真理子
あなた 鹿野 氷
道 臼井敦子
Kの肖像 44 宮野克行
1970年 中田 實
備忘録 2023.7.1(土)晴 関根正二3 矢澤重徳
ここはどこ? 川崎秀三
サルビアの花足立尚計77
連載 わが稗史抄 第三回 山本 茂
蚯蚓の戯言4 大林明彥
連載 いのち 母と子 自由への星 Ⅵ 重信房子
短歌三 海市立ち 楠本夏菜
Happy Birthday ! Takashi Igarashi 綿田友恵
錠剤 千田桃子
雨なら雨の 来栖微笑
積善館とふ書店 小河内仁美
相合傘の法則 世戸瑛子
Princess Mothei’s Promise 菅原あこ
初穂料300円「小吉」へ 鎌田圭一
振り返る 舛山誠一
君の通わぬ通学路 尾松 亮
人の顔四 永田 修
なゐ・ない・ナイ・無い・地震 福間三九郎
風狂へ 大林明彥
風狂の歌 福島泰樹
連載 月光シネマテーク50 あした花咲く庭で(15) 渡邊浩史
天神亭日乗16 来栖微笑
きょうの百葉箱 百年後の善良な市民である私たち 潮 なぎさ
神保町のんしゃら日記14 晴山生菜
コトバ数だけ数えうたの十九 山崎春美
月光歌筵Ⅰ 前号作品評 窪田政男/ Ⅱ 綿田友恵/Ⅲ 小田那津子
月光通信
編集後記