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金子文子 反逆の思想:「人間の絶対平等」を求めて

金子文子没後100年。新たな文子像がたちあがる。

⾦⼦⽂⼦(1903- 1926)の思想を、著書『何が私をこうさせたか』をはじめとする記録からたどる、画期的な論考です。⽂⼦は、裁判の中で次のように語っています。

 

「総ての⼈間は完全に平等であり、従つて総ての⼈間は⼈間であると云ふ、只⼀つの資格に依つて⼈間としての⽣活の権利を完全に且つ平等に享受すべき筈のものであると信じております。 」 (『朴烈、⾦⼦⽂⼦裁判記録』より)

 

人間はみな平等、というのは今では当たり前の考え方かもしれませんが、⽂⼦がこのような主張をしたのは⼤正時代、天皇制国家の時代でした。天皇もまた「総ての人間」であり「完全に平等」という、当時の日本国家を否定するような文子の思想は、⽂⼦の中にどのように芽⽣え、醸成されていったのでしょうか。

 

具体的には、第1部では⽂学研究的なアプローチで⾦⼦⽂⼦の表現を読み解くという今までにない試みから、第2部は⽂⼦が受容したマックス・シュティルナーや⽯川啄⽊などの思想から、⽂⼦が⾃死を選ぶまでの末期の思想に至るまでを検証します。「⼈間の絶対平等」を掲げてひたすらに⽣き、闘い抜いた⼈間・⾦⼦⽂⼦の新たな姿を、描き出します。

著者 安元隆子
発売日 2026年3月6日
ページ数 256 ページ
定価 2,500円(+税)
判型 四六判並製
ISBN 978-4-7744-0880-4

目次

はじめに1 「人間の絶対平等」を掲げた金子文子2 獄中手記『何が私をこうさせたか』3 本著の構成

序章1 検閲と編集者の関与2 文学として読む『何が私をこうさせたか』3 「私」の探求

 

Ⅰ 『何が私をこうさせたか』を読む

第一章「父」と「母」1 迷信家・運命論者の父2 依頼心が強く性に引きずられる母

第二章 山村の生活1 極貧の山村での生活2 貧しさの根源にある物々交換3 近代文学の描いた都会(都市)と田舎(故郷・地方・田園)4 経済的地域格差の発見5 教育現場の物々交換6 山村の自然の新しい価値の発見

第三章  朝鮮での日々1 京釜線の町・芙江2 岩下家──高利貸しと阿片── 3 笞刑4 金銭と裏表の論理に対置される朝鮮人の姿5 子供の尊重と学校教育批判6 朝鮮の人々と自然7 無籍者8 書かなかった/抹消された三・一運動

第四章 上京まで1 わけのわからぬ力2 語られなかった男3 上京──運命からの脱却と虚栄心の行方──

第五章 東京生活1 苦学生2 キリスト教への接近と幻滅3 「虚栄心」の時代

Ⅱ 『何が私をこうさせたか』その後

第六章 『獄窓に想ふ』と『啄木選集』1『獄窓に想ふ』と『啄木選集』2 金子文子の石川啄木受容3『獄窓に想ふ』「自序」五首4 反強権の思想5 三行書き6「我を愛する歌」と「己を嘲るの歌」、そして意識の運動性7 歌語と発想の類似8 生活のリアリズムと刹那の感情

第七章 マックス・シュティルナーの「唯一者」の思想1 シュティルナー『唯一者とその所有』と日本の翻訳状況2 金子文子の「自己」の発見3 一九二五年一一月の公判準備調書と提出書面4 政治運動から哲学運動へ5 自己犠牲

第八章 アルツィバーシェフ「復讐」の思想1 日本におけるアルツィバーシェフ受容2 『労働者 セヰリオフ』3 宮島資夫とアルツィバーシェフ4 金子文子の「復讐」5 アルツィバーシェフの『作者の感想』

第九章 末期の思想1 爆弾入手計画2 文子の証言の背後にあるもの3 獄中の虚栄心とその脱却4 末期の思想──死刑宣告まで──5 末期の思想──獄中死を遂げるまで──

第十章 人間の絶対平等とジェンダーフリー1 人間の絶対平等を求めて2 ジェンダーフリーを求めて

初出一覧金子文子年譜文献・参考文献

あとがき

安元隆子(やすもと・たかこ)

立教大学大学院文学研究科日本文学専攻博士前期課程修了、名古屋大学大学院国際言語文化研究科日本言語文化専攻博士後期課程単位取得退学、博士(文学)。日本大学国際関係学部教授を経て、現在、同・特任教授。著書に『石川啄木とロシア』(2006、翰林書房、国際文化表現学会賞)ほか。