新版 学校では教えてくれない差別と排除の話
自分がされていやなことは他人にしない。 そんな簡単なことができないのはなぜ?

「なぜ中学や高校で差別や排除を教えないのだろう?」という著者の素朴な疑問をきっかけに、2017年に刊行された『学校では教えてくれない差別と排除の話』。5刷を記録するロングセラーの本書が、この度リニューアルしてかえってきました。外国人労働者、ヘイトスピーチ、そして沖縄。現代日本の差別と排除の問題について、豊富な現場での取材を元に語り、解決への道を示します。
新版発行にあたり、新型コロナウイルス禍による差別や排除の問題、そしてクルド人差別の現場の様子などを加筆しました。
さらに、著者の友人であり、難民問題にも取り組んでいるイラストレーター・文筆家の金井真紀さんとの対談を追加収録します。
著者 | 安田浩一 |
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発売日 | 2025年9月18日 |
ページ数 | 約250 ページ |
定価 | 1,800円(+税) |
判型 | 四六判並製 |
装幀・造本 | 藤巻亮一 |
カバー写真・ イラスト |
金井真紀 |
ISBN | 978-4-7744-0865-1 |
目次
プロローグ
外国人労働者は奴隷じゃない
ヘイトスピーチ—憎悪に満ちた言葉はなぜ生まれるのか—
沖縄のことを知っていますか
1「いじめられっ子」と「いじめっ子」のはざまで
父の転勤、僕の転校、そしていじめ
高卒後、社会運動を経て週刊誌の記者になる
ライフワークとなった「労働問題」の取材
そして、興味の対象は日本で働く外国人労働者へ
2なぜ僕は差別や排除に興味を持つようになったのか?
中国人実習生の実態
外国人技能実習制度とは
外国人を奴隷のように働かせる経営者たち
日本経済がもたらした悲劇
実習生を安い賃金で働かせる仕組み
経営者の言い分にも一理あるが……
3排除される外国人労働者
外国人労働者がいなければ、日本の農家はまわらない
建前のうえでは外国人を国内で働かせない理由
技能実習制度をやめた韓国
かつて日本は外国に労働者を送り出していた
研修生が起こした殺人事件
4ある実習生が見た日本の現実
日本にうらぎられ、残念で悲しい
苦しめるのも助けるのも日本人
排除されている外国人は実習生だけではない
5差別する人々との出会い
気持ち悪い人々
ネタになると思って取材したものの……
差別が生み出す被害者
6ヘイトスピーチとはなにか
コロナ禍であぶりだされた偏見の数々
ネットのデマとウトロ地区放火事件
憎悪に満ちた言葉の暴力
法律で食いとめられるのか
クルド人にとって理想の地だった日本
普通に生活しているだけなのに
ここ二〇年で外国人住民は三倍以上になったが、犯罪数は激減
ヘイトに怯えて暮らすクルド人の子どもたち
7なぜ彼らは差別するのか
噴きあがるスイッチとは
どんな気分で差別するのだろう
「奪われた感」を持つ人の増加
8なぜ沖縄は差別されるのか
僕が沖縄に関わるきっかけ
露骨な差別がはじまるとき
沖縄を知らない「本土の住民」
フェンスの「内側」に囲われる沖縄
知らないことから差別が始まる
なぜ沖縄は「土人」という言葉に敏感なのか
沖縄を伝えつづける
9差別や排除とどう向きあえばよいのか
小さな正義感
学校で差別と排除をどう教えるか
差別や排除を見つめるまなざし
無知と誤解
ゆっくりと、少しずつ、共に生きる
差別と排除のない社会はきずけるのか
対談 安田浩一×金井真紀
「新版」あとがき
おすすめ文献
安田浩一(やすだ・こういち)
1964 年、静岡県生まれ。「週刊宝石」などを経てフリーライター に。
外国人労働者問題などをテーマに取材活動を続け、「ネトウヨ」 とされる在特会を取材した『ネットと愛国』(講談社) で 2012 年の講談社ノンフィクション賞を受賞。2015 年、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(「G2」vol.17) で第 46 回大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。2025 年、『地震と虐殺 1923-2024』(中央公論新社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。著書に『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版) など多数。