皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

写真師 島隆--明治・幕末を駆け抜けた日本女性初のフォトグラファー

知られざる女性写真家の物語。

島隆(しま・りゅう、1823-1899)、という女性をご存知だろうか。幕末の江戸下町、日本で初めて「写真師」を名乗った人物だ。

隆は、4歳下の夫で、「和製ダ・ビンチ」とも呼ばれた島霞谷(1827-1870)とともに写真技術を身につけ、千葉や新潟を遊歴した。霞谷が金属活字の製造に成功した直後に若くして病没すると、それら幕末の写真、絵画、印刷活字などの史料を故郷・桐生に持ち帰り後世に遺した。1986年、群馬県桐生市の島家土蔵から、隆が持ち帰ったそれらの資料、幕末から明治初期にかけての写真、絵画、印刷活字などの膨大多彩な遺品資料が続々と発見され大きな話題になった。

それらの資料が活用され、霞谷については研究が進む一方、隆については遺品を残した妻としての功績を中心に語られてきた。だが実は、帰郷後に桐生で写真館を開いたり、マンガン鉱を売り出すなど、晩年まで気丈に生き抜いたのだ。

著者は、それら貴重資料の発見から現在に至るまで、ながく地元紙「桐生タイムス」の記者として隆を追いかけてきた。本書は、そんな著者がまとめた、初の「島隆」の物語。「霞谷の妻」としてではない、日本女性初の写真師・島隆の一生涯を描き、世界へ、未来へと繋ぐ。

著者 蓑﨑昭子
発売日 2025年8月
ページ数 272 ページ
定価 2,500円(+税)
判型 四六判並製
装幀・造本 藤巻亮一
ISBN 978-4-7744-0864-4

目次

はじめに

第一章 上州・桐生から
高台の墓地で
顕彰碑を再建
隆の略自伝
女師匠、田村梶子
江戸との文化交流
一橋家の祐筆に

第二章 霞谷との日々 
島霞谷と結婚
共に遊歴の旅へ
銚子に長逗留
手習いの師匠に
筆をとる霞谷
武四郎と草雲と
今度は越後へ
写真術を習得
写真師の名乗り
日本初の写真家として
袴とブルーマー
写真に留める姿
草雲の悲劇
英語の学習
写真と肖像画
士族となり開成所へ

第三章 写真と油絵と
油絵の女性像
和と洋の融通
研究者ら続々桐生へ
「来信」の顚末
ヒポクラテスと三者
一橋大納言とハラタマ
敷物の謎
戦禍を避けて
霞谷、英雄を好む
笑う男、霞谷
一橋家への仕官
浅草かいわい
複写された武士たち
前橋藩主の写真御用
いろんなポーズ
活字御用は隆あてに
士族の誇りを持って
島活字の発明
霞谷の死去

第四章 帰郷して開業
隆、桐生に帰郷
桐生での写真の仕事
雙六に「青柳堂」
伊香保へ湯治旅
後家、士族として
ゴブラン織バッグ
草雲に油絵を指南
役者写真を複写
五姓田芳柳の依頼
晩年の闘い
書に託す心境

第五章 未来へ、世界へ
遺品を未来に
英国の女性写真家
「A・A」のために

あとがき

島隆・霞谷 年譜
参考文献
索引