皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

神保町のんしゃら日記6(2024年5月)

5月1日(水)実家(岩手県滝沢市)に帰省中。朝から神子田の朝市に行って、名物のラーメンを食べる。そのあと、母の車で雫石町の祖父母のところへ。たまには遠出しようよ、ということで、母の運転で久慈までドライブに行くことに。話が飛んだり脈絡がなくなったり同じ話を繰り返したりしているのだけど、二人とも機嫌良く楽しそうなので、母も妹も私も整合性はどうでもよくなっていて、まあいいやと楽しく聞いている。途中、道の駅で山菜や自然薯をお土産に買う。久慈の海をみて帰る。いい天気の、穏やかな海だ。

2日(木)朝の新幹線に乗りそのまま会社へ。綿田友恵歌集『赤鉛筆、父、母……。』の色校正を確認、きれいにできている。赤い波線と窓から見える海のイメージ。海の中に窓が見えるようでもある。
5日(日)ひじりばし博覧会で物販。小林昌樹さんと大尾侑子さんの対談で『調べる技術』『近代出版研究』を、カラサキ・アユミさんが参加される鼎談で『古本乙女、母になる。』を販売する。
6日(月)GW最終日。岩手で買ってきた山菜(タラの芽、コシアブラ、しどけ、こごみ)で天ぷら、コシアブラでほろほろを作る。ほろほろは、コシアブラとくるみと大根の味噌漬けを刻んだもの(うこぎやしどけを使うことのほうが多いらしい)。山菜の料理のなかではやっぱりほろほろが一番好きだ。白いごはんといっしょに、永遠に食べられる気がする。水やお湯をかけて流し込んでもいい。
7日(火)須田諭一著『増補版 頭脳警察』の打ち合わせ。PANTAさんの一周忌に向けて。
8日(水)今週、毎年一度の社員さんの面談。一対一で一時間くらいずつ話をする。2、3日かけて×5人分。普段聞けないことなど、あらためて聞いてみると気づくことが多い。
10日(金)犬飼淳著『インボイスは廃止一択』の見本ができてくる。さっそく著者に手渡しする。インボイスの本は実務者むけのものは数多あるけれど、この制度の問題点を指摘し、これを軸に消費税の嘘に言及した本はないのではないか。消費税もインボイスも廃止一択である。
13日(月)今日から佐中由紀枝さんの写真展。銀座の新井画廊へ早速観覧に行く。写真集『光の函』をタイトルにした展示会だ。大判でプリントされた写真は、本で見るのとはやっぱり違う味わいがある。出来上がったばかりの本も並んでいる。
14日(火)夜、近所のクリエイトに買い物に行ったら、なつかしいアイス「里もなか」があった。65円。栗の形のもなかの中に、栗のソースを包んだアイスが入っている素朴なアイス。美味しいものは色々あるけれど、子供のころに形成された味覚や好みはずっとつづいていくものだと思う。
16日(木)午後、綿田友恵さん来社。歌集『赤鉛筆、父、母……。』の見本を手渡す。集中この一首がある。
  お父さん、私ボクシング始めたよ 脳が揺れるほど殴ってみたい
穏やかで、少女のような人のなかにこんな激しさがあったのかと、著者を知る読者はおどろくに違いない。連休も挟んで急ピッチで制作、まずは予定通り完成したことに安堵する。
18日(土)文学フリマへ行く。入場まで20分もかかった。人でと賑わいに驚く、この読者(購入者)、いつもはどこにいるのだろう……。綿田さんの出展を見届けて、ひととおり全部見終わるともう閉場時間だった。同じビル内のハリ書房さんで、間借り本屋をされているいりえさんからおすすめ頂いた『ふわふわのにぎり拳』『ふわふわの狼煙』を買って早速読み始める。そのほかにも色々買った。久しぶりの人にも会えたりして楽しくもあったが、いろいろな不安や危機感も抱かされる日だった。
19日(日)極度の外反母趾になり足が三角定規のようなかたちに変形してしまう夢。気持ちが悪いのだけれど、どこか醒めた気持ちで見ている。疲れが出るのだろうか、土日の朝は暗い夢が多い。
20日(月)『インボイスは廃止一択』本日発売。
21日(火)家のなかに蛇の抜け殻が見つかる。本体は居場所不明。蛇は幸運の象徴とか、金運をよぶというので、商売繁盛をいのる。初めて見た蛇の抜け殻は白くて半透明でやわらかく、すごくきれいで、捨てるのが勿体ないくらいだった。毒はない蛇のようだ。
22日(水)『ふわふわのにぎり拳』『ふわふわの狼煙』、好きだなあ。シュールなショートショートが詰まった短編集なのだが、「虚偽エッセイ」と題されている。つまりこれはエッセイ集、つまりフィクションではないですよということが、メタ的に表現されている。ジャンルはいつも便宜的な物に過ぎなくて、フィクションだって作家が頭のなかに現象した現実なのだし、ノンフィクションだって「読む」行為を経て読み手の頭のなかに再構成されるときにはある種のフィクションなのだと思う。いりえさんが今度読書会をされるそうなので、今から楽しみにしている。
26日(日)月光歌会。終了後、綿田さんの歌集の刊行を皆でお祝いする。今は発信も簡単にできるし、結社に所属せずに歌を読み続ける人も少なくない。結社、という形式は、時代の流れとともに減少していくのかもしれない。しかし、年の離れた友達ができたり、様々に助け合えたりと、いい側面は確かにあると思う。
30日(木)支払、午後は『増補板 頭脳警察』の修正。根を詰めていたらほぼ終電になってしまった。家に帰って、カレーのほんの少し残った鍋で辛ラーメンを作って食べたらもう1時。Iさんが出張に出ていてしばらくいないので、睡眠と食生活がめちゃめちゃになっている。要注意、要注意。