皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

神保町のんしゃら日記9(2024年8月)

8月2日(金)南陀楼綾繁さんと書庫拝見の取材、麹町の防災専門図書館へ。ここの「防災」には、自然災害だけでなく、原発事故や公害、航空機や船舶もふくむ交通事故なども含まれる。つまり人間(人体)に対する災害を防ぐことが「防災」と定義されている。自治体の報告書類などが古いものから新しいものまで揃っている。展示類も防災の観点から行われていて、展示の説明を受け終わった時には、図書館の取材というよりは、防災教室を受けた後であるかのような気持ちになった。
(この日の取材は9月10日の日本の古本屋メールマガジンで公開)
夜は「月光」編集会議。次号は綿田友恵さんの『赤鉛筆、父、母……。』特集号。電車で寝落ちして横浜までしか帰れず、結局タクシーにのることに……痛い。昨日も、気の滅入ることがあったばかり。8月は頭からいいことない! くさくさする。

3日(土)日記のまとめ書きという恐ろしく無駄なことをやっている。

4日(日)松井理恵さんの著書『大邱の敵産家屋』(共和国、2023)のトークイベントに行ってきた。ゲストは斎藤真理子さん。この本は、韓国第三の拠点都市の大邱(テグ)のまちづくりの歴史を描く。大邱では、一部で旧植民地時代の建築物「敵産家屋」がそのまま活用されているのだが、それはなぜか、どのような経緯を辿ってきたのかが検証されている。「社会学と文学を往還しながら本を読むとより理解が深くなる(例えばこの本を読むと、建物の成り立ちやの構造がよくわかり、文学作品の理解も深まる)」「韓国では今は漢字を使わないので、若い人は敵産家屋の敵の字を意識せずに使っていて、敵産というと、レトロというようなイメージをもつ」というような話が印象的だった。たしかに、以前読んだ韓国のグラフィック・ノベル『大邱の夜、ソウルの夜』(ころから、2022)を読んだときには大邱とソウルの違いはあまり意識せずストーリーだけを追っていたけれど、本書を読んで思い返すと、登場人物たちのいる時代的な位置、街の輪郭などがより具体的にわかってくる。

6日(火)夜、東京琉球館「狼をさがして」の上映会に参加。韓国人のキム・ミレ監督が撮った東アジア反日武装戦線のドキュメンタリー。連続企業爆破事件から50年、まだ何も終わっていないし、考えるべき問題点はまだまだある。

9日(金) 新刊発売日。『増補版 頭脳警察』『パパイヤのある街』『シリーズ紙礫19掟』が取次搬入になる。『パパイヤのある街』は植民地時代に、台湾の作家たちが日本語で書いた小説をあつめたアンソロジー。当初、紙礫シリーズのなかに入れる予定であったものを、独立した単行本にした。さて、吉と出るか。

13日(火)世の中はお盆だけれど、休みを別の日にとっているのでこの3日間は通常営業。電車が空いていて快適だ。

16日(金)夏休みで今年も西表島へ。飛行機で『つながる沖縄近現代史』(ボーダーインク、2021年、前田勇樹・古波藏契・秋山道宏編)を読む。25名の研究者を中心とする執筆者が、現代の沖縄を考えるためのテーマを選び執筆しているのだが、面白いのは、それぞれのページの余白に、「この内容は、◯ページの◯とつながる」というように、ほかの執筆者のほかのテーマとどのように「つながる」のかを細かく拾っているところ。まさに編集の妙で私たちの本でも参考にしたり取り入れられる点がありそうだ。

23日(金)来月刊行の『鎌田慧セレクション1冤罪を追う』『新版〈海賊版〉の思想』入校日。鎌田慧セレクションは、鎌田さんの事実上の全集になる。1冊目に「冤罪」を持ってきたのは、もちろん9月に袴田巌さんの無罪判決がでる(予定)からだ。本巻には財田川事件を追った『死刑台からの生還』ほか、そのほかの冤罪事件についての講演録や論考を収録した。こうしてラインナップを見ると、冤罪、原発、自動車産業、教育問題、沖縄など、戦後日本の重要な問題を網羅されていることがわかる。

28日(水)書庫拝見の取材に同行。こちらは10月号で配信される予定。

29日(木)友人のS君が魚を持ってきてくれる。カヤック釣りの釣果だとか。タチウオ、アジ、イトヨリ、タイ。ご馳走様でした。

30日(金)支払い関係の一日。いつも、ひと月があっというまだ。