鉄鋼産業の闇(鎌田慧セレクション6)
炭鉱と鉄鋼。日本資本主義の出発地点は、矛盾の坩堝でもあった。
真っ赤な溶鉱炉の火に魅せられた男たちの夢と挫折。日本の高度経済成長を支えた基幹産業の闇に迫る。
本書に収めた2冊のルポルタージュのうち『ガリバーの足跡』は、釜石製鉄所の歴史と地域の人びとの歴史とを重ねて書かれた。
もう1冊の『死に絶えた風景』は、八幡の最底辺「労働下宿」から製鉄の現場に派遣された体験記録と、筑豊炭鉱の失業者たちとの交流を描く。
さらに、あとがき「日本の鉄鋼産業とトランプ政権」を収める。
著者 | 鎌田慧 |
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発売日 | 2025年7月10日 |
ページ数 | 312 ページ |
定価 | 2,700円(+税) |
判型 | A5判並製 |
装幀・造本 | 藤巻亮一 |
カバー写真・ イラスト |
風間サチコ |
ISBN | 978-4-7744-0846-0 |
目次
第一部 ガリバーの足跡 滅びるか鉄鋼王国ニッポン 7
黄金の日々 11
石をもて追わるるごとく 26
鉱山の友子同盟 53
もうひとつの戦争 76
鉄と魚 91
大形工場の終焉 108
黄昏の街で 126
そして七年後、釜石の不安 142
河出文庫版あとがき 153
資料 河出文庫版解説 童顔の秘密 佐木隆三 154
第二部 死に絶えた風景 157
プロローグ 159
〝透明度ゼロ〟の死/裁かれるもの
第一章 絶望の部屋──労働下宿の記録 167
労働下宿の夜/高炉掃除人/本工=カミサマ 下請=ニンゲン/
労働下宿脱出のあとで/暴力支配の系譜/〝門前雇用〟の労働下宿/
納屋制度と労働下宿/ある証言
第二章 鉄の流れ──釜石から八幡へ 201
栄光の製鉄所──釜石/離合集散の歴史/八幡村のゴールドラッシュ/
ゴールドラッシュの末路/ある漁師の記憶/奪われた漁場/
吉田磯吉の実力/ナグサメとワイヤカケ
第三章 せめぎ合う波──鉄鋼労働者の闘い 220
人夫供給業の歴史/溶鉱炉の火は消えたり/釜石での決起/
「赤トンボ」の歌/八幡製鉄所の労働構造/三島光産事件
第四章 黒い紐帯──八幡と筑豊 241
遠賀川の流れ/焼け焦げた時計/マイクロバスの道のり/
燃え尽きたピット/筑豊の〝最大産業〟/坑夫たちのいま/
人間スクラップ/夢のシームレス/ある閉山
第五章 洞海湾のほとりで 272
壊滅する住宅地/あらたなる拡大/追われる漁民たち/
君津へ──労働者の大移動/企業城下町の崩壊
エピローグ 285
「高炉公園」に立つ/洞海湾の深い眠り/Nさんからの手紙
単行本あとがき 295
講談社文庫版あとがき 297
現代教養文庫版あとがき 298
あとがき 日本の鉄鋼産業とトランプ政権 鎌田慧 299
鎌田慧 (カマタサトシ) (著)
1938年青森県生まれ。新聞、雑誌記者を経て、ルポルタージュ作家に。冤罪、原発、開発、労働、沖縄、教育など、社会問題全般を取材し執筆。それらの運動に深く関わっている。
主な著書に『新装増補版 自動車絶望工場』(講談社文庫)、『狭山事件の真実』(岩波現代文庫)、『反骨 鈴木東民の生涯』(新田次郎賞、講談社文庫)、『屠場』(岩波新書)、『六ヶ所村の記録』(毎日出版文化賞、岩波現代文庫)、『残夢 大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯』(講談社文庫)など多数。