皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

歌誌月光87号

特集 綿田友恵第一歌集『赤鉛筆、父、母……。』

母が頸打たれる音を聞きながら男はすべて滅べと思う
裏庭の枇杷の実を喰むハクビシンのようにわたしも許されていた
アスファルトに硬く孤独な音ひとつ声も上げずに蟬は夜死ぬ(自選)

歌人・福島泰樹主宰の「月光の会」が発行する短歌雑誌。今号の特集は、綿田友恵第一歌集『赤鉛筆、父、母……。』(2024)。記憶に刻み込まれている広島・原爆の風景、絡み合う家族という血縁、加害するものへの無意識のシンパシーなど、作歌や歌集編集にあたっての思いをインタビュー。また、タイトルや装丁決定に至るまでの秘話も明らかに。そのほか、6月に行われた黒田和美賞授賞式の報告(福島泰樹)や重信房子など会員の連作を掲載。

編者 福島泰樹(主宰)他
発売日 2024年10月31日
ページ数 ページ
定価 1,000円(+税)
判型 A5判並製
装幀・造本 藤巻亮一
カバー写真・
イラスト
佐中由紀枝
ISBN 978-4-7744-0854-5

目次

巻頭作品
「大正十二年九月一日」以後 五 「赤と黒」の歌 福島泰樹 4
寄港地 大和志保 6
家書家伝 竹下洋一 8
特集 綿田友恵第一歌集『赤鉛筆、父、母……。』  10
月光インタビュー14 綿田友恵
私を紐解く、ひとを眼差す『赤鉛筆、父、母……。』を読む 聞き手:大和志保 11
『赤鉛筆、父、母……。』自選30首 綿田友恵 22
平成に取り残されて 山田 航 24
真実に胸が満たされ…… ──綿田友恵『赤鉛筆、父、母……。』を読んで 栗林佐知 26
デザインについて 柿本 萌 28
一首鑑賞
五十嵐博信/大林明彥/岡本 康/小田那津子/鎌田圭一/川崎秀三
窪田政男/鹿野 氷/楠本夏菜/重信房子/白井大治/杉山志保
髙嶋和惠/竹下洋一/橘 世理/千田桃子/中田 實/晴山生菜 30
舛山誠一/宮野克行/武藤雅治/村上珠美/矢澤重徳/山崎春美
大和志保/山本 茂/凛七星/渡邊浩史
父からの贈り物──綿田友恵歌集『赤鉛筆、父、母……。』を読む 岡部隆志 44
離れゆく近距離戦 『赤鉛筆、父、母……。』 尾松 亮 47
海沿いの町から 有泉 50
広島の海 辻 まゆ子 52
あたたかく戻りたい場所に似てかなしみは 潮 なぎさ 54
報告、黒田和美賞 六・一五吉祥寺「曼荼羅」 福島泰樹 56
短歌一
『Early80s の、或いは蒼の時代』〈三〉 凛七星 58
名残りなく銀河の 窪田政男 59
八月の死者 夏野ひぐらし 60
鳥はウソ 武藤雅治 61
Kの肖像51 宮野克行 62
無為無策、我 五十嵐博信 63
この深き森 川崎秀三 64
別れ 山本 茂 65
石棺 矢澤重徳 66
友よ 鹿野 氷 67
砂時計の底に在るもの 橘 世理 68
命日 小田那津子 69
祈り 千田桃子 70
ドッペルゲンガー 村上珠美 71
秋のただよふ 櫻井真理子 72
黙契 髙嶋和惠 73
連載
わが稗史抄 第十回 山本 茂 74
蚯蚓の戯言 11 戦後の青春と恋——弘と日出夫—— 大林明彥 76
テロルと虐殺と「私」 関東大震災朝鮮人虐殺に関連して—其の八— 武藤雅治 78
自由への星 いのちの夏 重信房子 80
短歌二
悪魔 吉田裕幸 82
神話マシュマロ 辻 まゆ子 83
タイトル 渡邊浩史 84
悪いコといると…… 綿田友恵 85
日光にて 高橋凜凜子 86
フクシマⅢ ─津島の老女─ 廃園の夢 杉山志保 87
生身ということ 足立尚計 88
夏の旅、終わりの旅 来栖微笑 89
時計 舛山誠一 90
京の夜走り(奈良から祇園へ)五三㎞ 鏡 澄夫 91
惚茄子 白井大治 92
「うぐいすすいぐ」へ 鎌田圭一 93
明晰夢 ─同時代─ 中田 實 94
青空などは暗いのだ 大林明彥 95
連載
天神亭日乗 23 来栖微笑 96
きょうの百葉箱 ずれていることに気づけ 潮なぎさ 98
コトバ数だけ数えうたの二十三 山崎春美 100
月光シネマテーク56 あした花咲く庭で(21) 渡邊浩史 104
神保町のんしゃら日記21 晴山生菜 106
月光通信 108
月光歌筵Ⅰ 前号作品評 窪田政男 116/ Ⅱ 綿田友恵 118/ Ⅲ 千田桃子 120
編集後記 122