皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

シリーズ紙礫5鰻

おいしいけれど、怖くて不可解。

尾崎士郎に、次の戯詩がある。

 蒲焼を食いたしと思えども
 蒲焼はあまりに高し
 せめてはうなぎ屋の店先に立ちて
 うなぎの焼ける匂いをかいでみん

日本人はウナギを、ご馳走であり、生態は謎で、人に祟ることもある妖しい生き物と捉えて来た。本書ではそれぞれの側面を描いた作品を集めた。
このような作品を並べることで、従来のウナギ観に一石を投じることができたと思う。また、その投げ礫が、ウナギというフィルターの向うに現代文明の様相をあぶり出していれば幸いである。

著者 石川博(編)
発売日 2017年1月27日
ページ数 288 ページ
定価 1,800円(+税)
判型 四六判並製
装幀・造本 藤巻亮一
ISBN 9784774406237

目次

はじめに

一章 ウナギはおいしい
「万葉の鰻」大伴家持
「鰻」南方熊楠
「後生鰻」五代目古今亭志ん生
「鰻」原石鼎
「ごん狐」新美南吉
「海と鰻」小川国夫
「鰻のなかのフランス」中平解

二章 ウナギは不可解
「詩 鰻」北原白秋
「魚王行乞譚」柳田国男
「赤道祭」火野葦平

三章 ウナギはおそろしい
「狂歌・狂詩」大田南畝(蜀山人、四方赤良)
「魚妖」岡本綺堂
「東京日記」内田百閒
「海鰻荘奇談」香山滋

解説――石川博

石川 博  (いしかわ・ひろし

1957年、山梨県甲府市生まれ。慶応義塾大学卒。経済学、日本近世文学を専攻し、国語科の教員として長く駿台甲府高等学校の教壇に立つ。一時小学校の校長、山梨大学の講師を務める。
編・著書に「曲亭馬琴 南総里見八犬伝」(角川ソフィア文庫)、「山梨県史」(共著)など。地元の自治体史誌類に方言、民俗、文学、教育、近世史などの項目を執筆。山梨郷土研究会常任理事、やまなし県民文化祭小説部門審査員、山梨県富士山総合学術調査研究委員会所属。