神保町のんしゃら日記15(2025年3月)
1日(土)マイク・モラスキーさんがノーベル賞をとる夢。わー!!『闇市』と『街娼』を増刷しなきゃ!どれくらい?嬉々として考えているうちに目がさめてしまった。ぬか喜び。
日中は『鎌田慧セレクション4 さようなら原発運動』の校正を進めて、夕方手前から庭作業。2×4材に貼り付ける用の不織布をひたすら裁断。単純作業をしていると頭の中が整理される。座禅のようなものか。あとはかき菜を収穫する。ぜんぶ茹でて冷凍して、庭の青菜がなくなったらこれを食べる。当面のあいだスーパーで葉物を買わなくていいはず。夜はまた校正。集中していたら明け方に。
2日(日)2×4材に、ダッカー(巨大ホチキス)で、昨日裁断した不織布を打ち込んでいく。この人工木を畑とグランドカバーの境目に設置すると、一気に「庭」っぽくなる。あとは、大根を収穫すると、とうが立つ直前だった。あぶない、あぶない。この大根のみずみずしく甘いこと。そして明日が入校日なので、もう一度ゲラを確認。
3日(月)宇井眞紀子さんと写真集『アイヌ100人のいまⅡ(仮)』の打ち合わせ。クラウドファンディングに挑戦してみることにする。午後は色々気のめいることが続く。自分が悪いこともあるし、そうではないことも。はあ……。
それについても思うことは、権力は使うべきときに使わなければ、だれもそのツケをはらってはくれないということだ。振るうべき権力を振るわないことは、犯罪的だともいえる、そして、ある立場の人間には、ふるおうが振るうまいが、好むと好まざるとに関わらず、若者でも老人でも、権力があるのだ。そして周りの人間はその権力を前提として行為する。だから必要なときはむしろ権力を行使すべきなのだ。
4日(火)冷たい雨。昨日発生したトラブルの対応の打ち合わせをして、鎌田セレクションを下版、エンジニアさんとシステムの打ち合わせ。その間にまたガッカリが知らせ。翻訳のコンペに落ちたという通知。もう少し思い切っていい条件をつけていたら変わったかもしれず、度胸が足りなかったと思う。悔しい。今週はがっかり続きだ。夜は雪になりそうだったので早く帰宅。電車で金子文子の『なにが私をこうさせたか』を読む。
6日(木)そういえば受験シーズン。河原さん笹森さん亮一さんのお子さんたちは皆さん受験がおわり、無事に合格したようだ。よかったよかった。今週初めていいことがあった。
7日(金)能登恵美子さんの命日。みんなでお墓参りに行く。昨日買ってきた桜は、啓翁桜というそうだ。近所の「花屋あしべ」のお姉さんは、長さを揃えるために切り落とした小枝も「これもおちょこか何かにさしておけば楽しめますよ」と濡れたティッシュに包んでつけてくれた。ネギやセリの根っこから全体を復活させ、増殖させているものにとっては楽しい話。挿木にして増やしてみようかな。(結局水をやりわすれて放置してしまい失敗した。無念。)
夜、新刊絵本『ゆうやけこやけのえのぐばこ』の打ち合わせに窪島誠一郎さんと古茂田恭子さん来社。
9日(日)庭に空豆の花が咲いている。白い花びらの真ん中が黒く瞳のよう。幾百の目がこちらを見ているようだ。かぶも拳大の大きさになったので収穫する。それから、去年スーパーで買ってきて、根の部分を植えておいたセリが大繁殖している……2束ほど買ってきたのが、ほぼ2畳ぶんくらいに。セリって水場じゃなくても成長するんだなあ。セリと豚肉でしゃぶしゃぶにする。根ごと食べても当面なくなりそうにない。
14日(金)iPhoneのキャリアを楽天モバイルに変更した。もう機体代金は払い終わっているので、キャリアを変えても安くなるのは数百円だけど、多少はポイントが貯まるならばと。我ながらセコいが、期間がながくなれば結構馬鹿にならなかったりもする。回線のスピードは果たしてどうだろうか。
15日(土)鵠沼海岸のシネコヤさんで映画『自由と壁とヒップホップ』を鑑賞。『パレスチナ、イスラエル、そして日本のわたしたち』を最初から最後まで全体に目を通す。内容の細部は担当者がよくよく見ているので、私のほうはむしろ俯瞰で見るように気をつける。
18日(火)『近代出版研究4』があす入稿なので、通して読むのは河原さんの仕事だが、全体をざっと通してみる。私も立ち会った片山杜秀さんへのインタビュー箇所の冒頭、出席者紹介のところを見て目玉が飛び出る。私の紹介が「普通の本好き」になっている。そりゃあ錚々たる古本者達のなかにあってはそうだけど、さすがにカッコが悪いしつまらないので修正指示。オーダーは「削除するか、もっと面白く!」。さて果たしてどうなったかは紙面をご覧ください。
19日(水)今日は『近代出版研究4』『パレスチナ、イスラエル、そして日本のわたしたち』の入校日。河原さん、楠本さん、亮一さんはギリギリまで粘っている。事前の告知活動もあってか、発売前の反響は良い。みなさんとにかくご苦労様でした。
23日(日)月光歌会。《虹色の葉をそよがせるオリーブの 終わらせてはいけない物語》。先日シネコヤさんで映画をみたあとに作ったもの。
24日(月)学生アルバイトさん2名が卒業・修了し、月末でバイトも終了になるので、2人と河原さんと一緒に辰巳屋でお昼ご飯をたべる。勉強になった、やってよかったという。ずっと地味なDB関係の仕事に対してそういってもらえてしみじみ嬉しいものがあった。決して高くないバイト代、それ以上のものを持ち帰ってもらえただろうか。二人とも出版業ではないが、遠くはない場所に就職するそうだ。また会う機会があるといい。
26日(水)『鎌田慧セレクション4さようなら原発運動』発売日。3月中に刊行できた。これまで書かれてきた鎌田さんの反原発運動の文章を、3・11前、3・11、3・11後に分けて全体を構成した。全12巻の中でも編集の妙が生きた巻になったと思う。
27日(木)今年の秋、村松武司さんのかくれた名著『朝鮮植民者 ある明治人の生涯』(三省堂、1972)を復刊する予定で、そのための打ち合わせ。斎藤真理子さんに『増補 遙かなる故郷 ライと朝鮮の文学』に続いてお世話になる。この本、刊行直後に三省堂が倒産し、あまり市場に出回らなかったと聞く。去年は森崎和江さんの『慶州は母の呼び声 わが原郷』が新版としてちくま文庫にはいった。植民者としての日本の市井の人びとにも関心が寄せられるようになってきたのなら喜ばしいことだし、自分がそこに連なる者であることを、出版を通じて記録し続けていかなければならない。
28日(金)桜がもう七分咲きくらいになっている。新しい企画の打ち合わせをする。
30日(日)収穫したてのアスパラを生で齧る。みずみずしく、しゃくしゃく。新鮮な素材は、調理をしないで、そのまま食べたほうが美味しいこともある。加工調理が必要なければ、時間もかからないし、塩分も少なくすむ。やはり素材そのものの良さに勝ることはない。