皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

神保町のんしゃら日記10(2024年9・10月)

9月1日(日)ホームセンターでキウイの「紅妃」を買う。キウイは木に雌雄があり同じ系統を組み合わせないと実がならないそうだ。そとは断続的な雨。せっかくの日曜なのに庭仕事ができなくって残念だけど、雨が降る音は、いいなあ。

3日(火)家に帰ると、新しい自転車が届いていた。やったー!タイヤまで真っ赤なクロスバイク。ペダルの重いママチャリ、いままでお世話になりました。あしたから新しい自転車でさくさく通勤た。しかし…フェンダーと荷物おき(別売)の付け方がわからない。ちょっと私の日曜大工スキルではすぐにどうこうするのは難しそうだ。休みの日にゆっくりやろう。

5日(木)クロスバイクはフレームの位置が高いので、乗り降りする時、足をうしろからまわす。ママチャリの場合は前から足を回すけど、クロスバイクで同じようにすると、フレームに足が引っ掛かってしまう。今朝は早速週間でこをやってしまい、自転車置き場で一人でコケる。痛い……。

13日(金)東京堂書店で、鎌田慧セレクションのフェアがはじまる。鎌田さんの著書、選書合計百冊余りを壁面一面を使って販売。一ヶ月以上にわたって開催してくれるそうだ。有難い。並んだ本のなかに欲しい本がたくさんある。まずは早速『袴田巖と世界一の姉』(花伝社)を買って帰る。

14日(土)今日、明日と一泊二日で初めての社員旅行。皓星社とその家族で総勢8人。マイクロバスを借りたが、なんとまあ早々に渋滞にはまってしまう。三連休の初日だもの、それは当然混むよなぁと、見通しの甘いことに遅ればせながら気づく。それでも十分、バスの旅と、忍野八海を満喫した。忍野八海の水は透明度が高く、ずいぶんそこの方まで見通せた。もっと時間をとってゆっくり散策したいくらいだった。宿泊は一棟貸しの古民家なので、途中のスーパーで食べ物と飲み物を買い込み、夜はバーベキューをした。みんなで肉や海鮮を色々焼いて、話しながら食べたり飲んだり。

15日(日)早めに起きて散歩。西湖のまわりをぶらぶらあるいた。九時に出発して藤巻さん(当社創業者)の実家へ行き、弟さんご夫妻が維持されている農園で、ぶどう狩りさせてもらう。そこここにたくさん実ったシャインマスカットを贅沢に収穫! シャインマスカットの美味しい食べ方、おすすめの果樹や野菜なども教えていただき、話が尽きなかった。バスで帰りに猿橋を見学しながら、夕方、新宿に戻る。

17日(火)絵本のハッピーオウル社から、新刊『うえをみて!』発売。車椅子の子供が主人公で、二階から下の道を見下ろす独特の構図の韓国絵本。その子が家の中から出て行くまで、心の壁を乗り越える過程を描いた絵本なのだけれど、そんな教訓めいたことを考えなくていいくらい、胸のあたたまるじわっといい絵本だ。「やさしい」とは、こういうことかなと思う。傷ついている人に、当たり前のように寄り添えるということ。

20日(金)丸善お茶の水店の前で、お茶丸マーケットに出店。いろいろな出版社があつまって、書店さんの中でマルシェをするイベント。7月に茅ヶ崎の長谷川書店での「本の産直市」に参加したのに続けて2回目の参加。前回よりも1冊あたりの冊数を減らして商品数を増やしてみたが、果たして結果は?夜は、月光編集会議。

21日(土)お茶丸マーケット2日目。店頭にたって直接お客さんと本の話をするのは楽しく、時間があっという間にすぎていく。他のブースでも本を買う。遊びではないのだけど、やっぱり楽しいということは活力の源泉なのだから、重要なことだ。夜は参加者のみなさんとビール。

26日(木)『パパイヤのある街 台湾日本語文学アンソロジー』の刊行記念イベントを、日本橋の誠品書店で開催。

27日(金)図書館へいく道の途中(川沿い)にいちじくが植わっていることに気づく。こんなところに一体なぜ? 自分で育てていると、野菜や果物の種類がわかるようになる。

 

10月5日(土)『袴田巖と世界一の姉』(花伝社)を読み終わる。いいタイトルだなあ。お姉さんの袴田ひで子さんに「弟の冤罪を晴らすために、自分の一生を犠牲にした人」のイメージをもっていたのは、大間違いだった。自立心のあるとても格好良い人だ。一生かけたことは確かだけれど、ひで子さんが自分の人生の選択として選び取ってきたものであって、犠牲的な奉仕ではない。冤罪を晴らす一連の運動の流れがよくわかる良書で、刊行のタイミングもよかった。認知のバイアスが冤罪をうむ、という言葉が胸に残る。

6日(日)滋賀県木之本市で「きのもと秋のほんまつり」に参加して、一日の出張販売。このイベントは去年に続いて二回目の参加。木之本の出版社「能美舎」の堀江さんと、木之本駅前の「江北図書館」の理事の方達が旗をふってくれて、実現している。この江北図書館、なんと百二十年続く私立図書館なのだ。(この図書館が現在に至るまでの物語は、修繕費をつのったクラウンファンディングのページや、私も一緒に取材に同行している、南陀楼綾繁さんの「書庫拝見」に詳しいので、ぜひそちらを見てもらいたい。)そんな場所での開催なので、来場者の知的好奇心や本への欲求も高くて、お客さんもよく話を聞いてくれるし、売れ行きもすごくいいのだ。滋賀県にお住まいの『〈新版〉海賊版の思想』の著者、山田奨治先生も応援に駆けつけてくれ、張り切って販売。充実した一日を過ごす。滋賀と葉山を一日で往復するのはなかなか大変だけど、宿泊費節約のため、体力を振り絞る。

9日(水)昨日の午後の新幹線で盛岡へ今日は休みをとって、入院している親戚のMさんのお見舞いに行く。父方の祖父の妹夫婦の夫にあたる人だ。一、二歳のころ近所に住んでいたこの夫婦(と当時はおばあさんがいた)の家が私の保育園がわりだった。子どものいないこの夫婦がずいぶん可愛がってくれた(と聞いている。だって流石に記憶がない)。ぼんやり覚えているのは陽の当たる縁側と揺れる籐椅子、その籐椅子にのって揺れるのが好きだったこと。おばちゃんの手作りの人形たちや、歴史物の本がギッシリ詰まった本棚の記憶は、ある程度大きくなってからの記憶が、上書きされていったものだろう。あのあたたかい縁側が、子どものころに大事にしてもらった幸福な記憶の象徴として、残っているのだろう。病室に入ると、Mさんはよくきたよくきたと喜んでくれる。顔色はいいけれど認知症が進んでいて、話があちこちに行く。うんうん、と聞いている。一緒に家に帰ろう、といわれると堪らなく切ない。多分もう病院から出ることはできないだろう。遠くないお別れを思う。

9日(木)新幹線で東京へ。盛岡から神保町へ直接出勤。

24日(金)明日からの神保町ブックフェスティバルの追い込み準備。

25日(土)神保町ブックフェスティバル1日目。今年はワゴン装飾を去年とは変えてみて、高さもでるように工夫してみた。さあどうなるか?それぞれの本の特徴、読みどころ、裏話など喋っていると楽しくて1日あっという間に終わる。毎年、他社のワゴンも見たいと思うのだけれど、いざ始まると自分のところを離れる時間が惜しくて、ほとんど見まわれずに終わってしまう。夜は同業者の仲間たちとビール。

26日(日)神保町ブックフェスティバル2日目。今日も張り切って販売。ちょうど昼頃、大宅壮一文庫の平澤さん、一哲と彼女がきてくれた。そのタイミングで雨が……!ワンオペだったので慌てたけど、立ってるものは親でも使え。みんなに手伝ってもらいなんとかカバーした。ちょうどアルバイト2人もきてくれ、急の雨をなんとか凌いだ。売上は2日間で昨年より伸びなかった。実験的に昨年と値付け方法を変えて安くしてみたので、それがあまりうまくいかなかったということか。それでも、なにもしなければゼロだった。何事も経験、といって自分を労う。

27日(月)鎌田慧セレクション2『真犯人出現と内部告発』の入稿日。この巻には「弘前大学教授夫人殺人事件」と
「隠された公害」が入る。冤罪と公害、という一見異なるテーマのように見えるけれど、告白するも者の良心という点で通底している。前者は、真犯人の登場(罪の告白)によって冤罪が晴れたケース、後者は内部告発によって公害隠しが明らかになったケースだ。鎌田さんの本のテーマはどれも重いけれど、それは私達の生活と地続きの話で、遠い別世界の話ではないことが、読んでいく過程でわかる。若い世代の人にこそ、読んでもらいたい。手にとってもらえるようにしなければ。
それから来週からの図書館総合展の準備に入る。新しいデータベースのお披露目がある。これが終わるまでは息をつく間がない。でも焦っても仕方ない。寝る、食べるはしっかりしつつ、一つ一つ片付けていこう。