皓星社(こうせいしゃ)図書出版とデータベース

第1回 戦前出版社PR紙誌の未見雑誌

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飯澤文夫(元明治大学図書館)

 棺には故人の好きだったものを入れて送りたい。母親は、夫が生前に読んでいた新潮社『波』の近刊3冊を入れた。2026年8月8日の『東京新聞』に掲載された53歳の主婦の投書、「出版社PR誌にワクワク」である。『波』は愛読してくれた故人とともに、煙になって天に昇った。以て瞑すべし。PR誌にとって、これ以上の最期はあるまい。

 その主婦は、母親が入院すると、『波』や岩波書店『図書』をたびたび病室に届けた。書店のレジ横などに無料で置いてあるPR誌は、エッセーや評論、対談など、薄くても中身が濃く、人気があるのか書店に行っても残っていないことも多い。そこで、数社分の定期購読を申し込んだ。「どこも1ヵ月100円ぐらいでポストに届く。わくわくする」。わずか300字余りの投書だが、PR誌の愉しみを余すことなく語っている。

 

 汲めども尽きぬ魅力を湛える出版PR誌である。だが、戦前の出版PR紙誌について、全容を記した文献はないといっても過言ではない。

 そこで、明治中期から昭和27年(1952年)までの書物雑誌を俯瞰 した斎藤昌三の『書物誌展望[1] に、「宣伝誌」として何誌かが言及されていることや、日本近代文学研究者の大屋幸世氏が、『日本古書通信』で昭和前半期の21誌を取り上げた「PR紙誌探索」[2]を手掛かりに、2019年から同誌に「続PR紙誌探索」[3]として、約120誌を紹介 してきた【図1】。

【図1】「続PR紙誌探索」第80回(『日本古書通信』2025年12月号=終刊号)

 それなりに意義のある仕事と考えたが、同誌は2025年12月で終刊になってしまった。いま少し積み残したものがあり、残念に思っていたところ、皓星社の河原努さんから、当マガジンで継続し、いづれ1冊にまとめないかとの、ありがたい申し出をいただいた。

 PR紙誌は申すまでも無く販促用で、読み捨て、使い捨てにされてきたことから、発行元の社史[4]にも詳しい記録は見当たらない。図書館等も、日本近代文学館と神奈川県近代文学館を除いては収蔵するところが少なく、創刊から終刊まで揃いで所蔵されることは稀有である。

 探索再開に当たり、まずは筆者が未見の雑誌を示しておきたい。これらは、様々な情報により、発行されたことが明らかと思われるが、現物が確認できていないものである。PR誌でない可能性もある。皆さんの力をお借りしたいと願っている。

 

『俳書堂籾山書店蔵版時報』。大正期の籾山書店刊行図書の巻末広告に、「蔵版時報は書籍目録でございます。蔵版時報は書籍請求案内でございます。蔵版時報は有益なる、又興味深き雑誌でございます」と記されている。

『聚芳閣出版月報』。第1号の表紙に印刷された新版増版広告から、1920年代半ばと推測される。

『書店繁昌』(中央公論社)。嶋中雄作が、戦前の宣伝物を振り返り、「『書店繁昌』から『出版情報』へ」(『出版情報』創刊号 日本宣伝社 1946.1)を書いている。1952年頃から発行されたと思われる『書店はんじょう』には、通巻号数と復刊号数が表示されている。

『社会と書籍』(紀伊國屋書店)。年不明の拾月号は、乙部泉三郎「図書館を要求せよ」などを掲載。乙部は1920年代に満鉄撫順図書館長、1930年代に県立長野図書館長を務めた人で、戦後は長野の郷土史家としても知られる。縦24cm横12cmほどの変形判。

『早稲田出版月報』。ネット上に[5]所蔵者が、書影入りで入手の経緯を述べ、1928年4月から29年11月にかけての7号分の目次を掲載し、1918年1月の創刊かと推測している。

以下は、大屋「PR誌探索」に書影入りで取り上げられているが、同氏の架蔵に依っているため、稀覯誌が少なくない。

『読書趣味』(岡倉書房 第1号 1933.10)

『學藝往来』(春陽堂 第2号 1936.5)。1930年4月から31年4月にかけて、同名誌第1~13号が発行されている。それは日本近代文学館に収蔵されている。

『栞』(赤塚書房 第1号 1937.7)

『篁新刊月報』(竹村書房 第58号 1939.12)。『新刊月報 竹村書房』の改題後誌。

 

[1] 斎藤昌三『書物誌展望』(八木書店 1955)

[2] 大屋幸世「PR紙誌探索」上・下(『日本古書通信』712-713 1988.11-12)

[3] 飯澤文夫「続PR紙誌探索」1-80(『日本古書通信』1078-1157 日本古書通信社2019.4-2025.12)

[4] 丸善の『學鐙』には、『丸善百年史』(1980)に各号の書影入りで詳細な記述があるのを始め、紅野敏郎『「学鐙」を読む』[正]、続(雄松堂出版 2009)などがある。異例のことである。

[5]古書からたちで未知の早稲田大学出版部PR誌『早稲田出版月報』を知る」(神保町系オタオタ日記 自称「人間グーグル」 2019-01-02)*2026.8.26閲覧

 

編集者より

 今月から飯澤文夫さんの連載「続々PR紙誌探索」が始まります。
 ここでの「PR紙誌」とは出版社が主に書店で配布する出版PR紙誌のことで、有名なところでは岩波書店『図書』、新潮社『波』、筑摩書房『ちくま』、集英社『青春と読書』といったものになります。
 飯澤さんは、昨年末に惜しまれつつ終刊した『日本古書通信』で80回にわたって「続PR紙誌探索」を連載し、戦前・戦中の出版PR紙誌を丹念に調べ、その紹介に努めて来られました。
 これからの連載では「続PR紙誌探索」で紹介しきれなかったものをご紹介いただくので、継続の意味を込めて「続々PR紙誌探索」と題する次第です。


飯澤文夫(いいざわ・ふみお)

1949年長野県辰野町生まれ。元明治大学図書館勤務。長く名著出版『月刊歴史手帖』、岩田書院『地方史情報』で地方史研究雑誌の目次情報を整理・編集し、平成11年より『地方史文献年鑑』(岩田書院→白鳥舎→日外アソシエーツ)を刊行する。編著に『飯澤文夫書誌選集』(2015)『飯澤文夫書誌選集II』(2016、ともに金沢文圃閣)などがある。