インターンネット時代の表現の自由
ジェレミー・ハリス・リプシュルツ 著
尾内達也 訳
本書は、インターネットにおける表現の自由が、法的・社会的にどこまで可能かに
ついて、社会コミュニケーション理論の立場から包括的に論じたものである。表現の
自由の歴史的な検討をはじめ、インターネットの新しい性格、プライバシーと表現の
自由、著作権や所有権の問題など、インターネットに係わる諸問題が具体的な事例を
踏まえて広範囲に取り上げられている。著者は、表現の自由をさまざまな観点から考
察し、インターネットにおける表現の自由を守るためには新しいパラダイムが必要で
あると示唆する。
著者紹介
ジェレミー・ハリス・リプシュルツ
1958年生まれ。ネブラスカ大学コミュニケーション学部準教授。他に「放送品位
:FCC規制と合衆国憲法修正第一条」、「犯罪とローカル・テレビ・ニュース」(マイケル・L・ヒルトとの共著)など。
訳者紹介
尾内達也
翻訳者。1960年生まれ。 主な訳書:ホルスト・ジーベルト『環境経済学』(シュプリンガー・フェアラーク東京)など。
目次
序文
第1章 表現の自由の社会コミュニケーション理論―政治とインターネット
表現の自由を理解する媒体としてのインターネット/表現の自由の限界/印刷と放送としてのインターネット/インターネット規制の政治学的考察/表現の自由を理解するための政治学的考察/伝統的な法思想との齟齬/表現の自由を理解する際の社会理論の役割/通
信品位法に対する異議申し立て:リノ対米国市民自由連合事件/表現の自由の意味/表現の自由の社会的理解に着目
第2章 表現の自由に関する伝統的法思想の歴史的概観
コモン・ローの考え方/事前抑制/植民地の影響/行為とその他の形態の表現の自由/憲法の影響/二〇世紀の考え方/思想の自由市場の登場/思想の自由市場批判/社会的責任の要請/その他の考え方/修正第一条の意味
第3章 表現の自由の放送モデル対印刷モデル
公益、便益、必要性・周波数の希少性/受認者責任と許認可/情報内容のゾーニング/規制の政治学/公平規制/選挙の考察/ポルノ、猥褻、下品/TRACと区分の批判
第4章 表現の自由に対する規範法アプローチ対社会理論アプローチ
規範思想対社会思想/文書誹毀法/人間行動の産物としての表現の自由/社会的抑制/説得、プロパガンダ、世論/調査の限界/政治的・経済的考察
第5章 司法長官リノ対米国市民自由連合―インターネット時代の法的試金石
訴訟の事実/法的問題/最高裁の論証/最高裁の判決/将来のインターネット規制への影響/補遺
第6章 ドラッジ・レポートとクリントン・スキャンダル―インターネットの情報内容に関するケース・スタディ
政治学的考察/『ドラッジ・レポート』の性格/スポットライトの中に/インターネットの世界での表現の自由の影響/エピローグ
第7章 インターネットの情報領域に関する調査
企業メディアのサイト/教育サイト/政府サイト/民間およびその他のサイト
第8章 電子メール、リストサーブ、その他の表現の自由の個人的な形態
コミュニケーション手段としての電子メール/利益集団のコミュニケーション/表現の自由の個人的な形態
第9章 プライバシー侵害の特殊ケース
プライバシー法/情報アクセス/社会的価値としてのプライバシー/電子時代のプライバシー/倫理的・社会的な制約
第10章 デジタル時代の財産権と商業権
著作権の考察/商標問題/特許権/公正使用/商業的言論/マイクロソフト裁判/その他の企業問題/倫理的・社会的な制約
第11章 国際的な問題の比較
法の国内規制/国際法上の諸問題/社会的制約の比較文化的考察
第12章 デジタル時代の表現の自由を考えるために
社会コミュニケーション理論再び/社会的・政治的・経済的な限界/インターネットを越えて/デジタル・コミュニケーションの将来
訳者あとがき
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