「病いの経験」を聞き取る
ハンセン病者のライフヒストリー
蘭 由岐子 著
ハンセン病者の「病いの経験」=主観的世界を、語り手との密な相互作用を通
して描き出す、気鋭の社会学者によるライフヒストリー論の労作。社会学の新たな可能性を切り拓く。
著者紹介
蘭 由岐子(あららぎ・ゆきこ)
1958年、兵庫県生まれ。1983年、奈良女子大学大学院家政学研究科修了。奈良女子大学博士(学術)。九州女子大学専任講師を経て、現在、賢明女子学院短期大学生活学科助教授。
専攻は家族社会学、質的調査法、医療社会学。
著書(いずれも分担執筆)に、『実践のフィールドワーク』(せりか書房、2002年)/『ソーシャルワーカーのための社会学』(有斐閣、2002年)/『情報生活のリテラシー』(朝倉書店、2002年)/『フィールドワークの経験』(せりか書房、2000年)などがある。
目次
第部 ライフヒストリーを聞き取るということ
■序章 フィールドに出る、ライフヒストリーを聞き取る
―「わたし」の経験
1 はじめに――ハンセン病・ハンセン病療養所について
2 なぜ「わたし」はハンセン病療養所入所者の聞き取りを
するようになったのか
3 聞き取りという実践
――ハンセン病とかかわる「わたし」の経験
4 ハンセン病療養所入所者からライフヒストリーを
聞き取るということ
5 課題
■第一章 ハンセン病者研究の方法論的視座
1 ハンセン病者のなにに焦点をあてるか
2 「病いの経験」と「病いの語り」
3 ライフヒストリーの方法論
第部 ハンセン病者の「病いの経験」
■第二章 ハンセン病者にとっての「家族」
1 はじめに
2 ハンセン病療養所とその入所者の現況
3 入所者と家族
4 入所者にとっての「家族」とは
■第三章 「悔い」を生きる
1 ある論評
2 発病から療養所入所まで
3 結婚 4 在郷家族との関係
5 「後悔すること」の意味
■第四章 「正直に」生きる
1 独特のアイデンティティの表明
2 中山義和さんというひと
3 ハンセン病を病むということ、
療養所で暮らすということ
4 中山義和さんのその後
■第五章 「六つの名前」を生きる
1 六つの名前
2 療養所入所以前
――○○チヅ、岩田加代子、大牟田与志、中井良子を生きる
3 療養所入所後――藤川チヅ、佐藤良子を生きる
4 戦後――中井良子、佐藤良子、そして藤川チヅを生きる
5 むすびにかえて
■第六章 「社会」に生きる
1 ハンセン病者のサブカテゴリー
2 療養所退所者にインタビューするということ
3 うそをつくのが上手になった人生
――島田一成さんのライフヒストリー
4 不遇な人生――武内太郎さんのライフヒストリー
5 静かな闘志――沢口明さんのライフヒストリー
■第七章 「訴訟期」を生きる
1 論理ではなく心情――原告にならない理由
2 原告になることの苦悩
――社会復帰者 沢口明さんの経験
■第八章 「訴訟期療養所」というフィールドで
1 ハンセン病訴訟原告勝訴
2 訴訟期ハンセン病療養所
3 あるフィールドワーク
4 フィールドワークを終えて
5 差別をめぐる位置取り
――告発、啓発、忌避、そして、向き合うこと
■むすびにかえて
1 語ることの困難さとその克服
2 誰がどのように語りを聞くか
――語りと社会的コンテクスト
3 今後の課題
■補遺 ハンセン病政策史の概要
1 戦前のハンセン病予防政策
2 戦後のハンセン病予防政策
3 「らい予防法」の内容
4 「らい予防法」廃止
5 「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟提訴と原告勝訴
■文献一覧
■資料
■あとがき
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