四六判・セミフランス装・312頁 定価1,800円+税
2002年10月発行
ISBN4-7744-0321-0 C 0093
装丁 宇野亜喜良
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サクラン坊とイチゴ
宮 林太郎 著

ある朝、男が目覚めると絶世の美女になっていた……
それは女の欲望に対して魅力ある凶器だった。
「もっと出したり入れたりしてみて!」と、わたしが言った。
カフカも仰天、90歳の性豪 作家の「変身」譚。 瑞々しいエロティシズムと エスプリにみちた傑作小説。




91歳の性豪作家、宮 林太郎!

冒頭の一行からして、カフカも目を剥く奇天烈な性小説の作者のパワーは、並でない。知る人ぞ知る宮氏の横顔を簡単に紹介させていただく。
氏は徳島県生まれ(明治44年、現在91歳)。東京医科歯科大学を卒業後、目黒区で祐天寺に医院を開業した。(中略)「硝子の中の欲望」「女・百の首」「卵巣の市街電車」「日本の幻滅」「タヒチ幻想曲」など著作は十数冊。既に全8巻まで本になっている「無縫庵日録」の分量 は、永井荷風「断腸亭日乗」の三倍を超え、その続きは今も雑誌「星座」に連載中である。
愛読書は、ロレンス、ヘミングウェイ、へんりー・ミラー、ノーマン・メイラーなど。絵も大好きで、玄関や居間には、パリで購入したピカソのエッチングやアイズピリのリトグラフが、いくつも掛かっている。異様に大きな目をみひらいて、夜の広場に立つ裸婦像で知られるベルギーの画家ポール・デルボーにも傾倒しており、「清らかな淫婦」ともいうべきそのシュールな作風は、相通 じるものが感じられる。
 とにかく、貧乏臭いのは大嫌いで、一日中セックスのことばかり考えているとのこと。最近では、ハロルド・ジェフィ「ストレート・レザー」にわが意を得たというから、筋金入りだ。わが日本にかくも優雅で、型破りな性豪作家が生息していたことは、奇跡に近い。

初出誌『新潮』(2000年11月号)巻末「FORUM」欄より

 

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