『子不語の夢』刊行に、多くの言葉が寄せられました。忘却の井戸を掘り、追憶の洋燈を磨く時、私たちは孤独ではないようです。喜びを、いざともに。しみじみを、いざともに。 |
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(『子不語の夢』編集スタッフ代表 浜田雄介)
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●平井憲太郎/小酒井美智子 ●書評・新聞による紹介記事 ●編集後記 |
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平井憲太郎 『月刊とれいん』編集長、江戸川乱歩令孫 | |
我が家では、小酒井さんはいつも特別な人だった。 |
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小酒井美智子 小酒井不木著作権継承者 | |
『子不語の夢―江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』の刊行で、私は本当にうれしく、ありし日の乱歩先生をなつかしく思い出しています。主人と初めてお宅に伺った時から、四半世紀にわたる長いおつき合いが私の青春時代でした。本を読みますと不木も身近に感じられてありがたく、出版を心より感謝しております。 |
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亜駆良人 畸人郷 | |
ここから日本の探偵小説が始まったのだ 本書は探偵小説黎明期の貴重な書簡集である。時に乱歩二十九歳、不木三十三歳。そこでは乱歩が、不木が、正史が、西田政治が躍動している。書簡の一つひとつを読むたびに心が躍るような感じがする。そして、探偵小説に対する情熱が漲ってくるのを感じるのだ。つけられた脚注も、まさに鬼気迫るものがある。例えば、大正十四年四月九日付の書簡を見よ。ここから日本の探偵小説が始まったのだと感じるのは私だけではあるまい。 |
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芦辺 拓 探偵小説家 芦辺倶楽部 | |
江戸川乱歩ほど自分について語り、しかも肝心の部分を隠しおおせた作家はいません。僕ら間抜けな探偵は、彼がばらまいた大量
の証拠に目をくらまされ、今もって真実をつかめずにいるのです。 |
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井家上隆幸 コラムニスト | |
*『図書新聞』第二七〇七号より抜粋 |
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石塚公昭 人形作家 | |
*ウェブサイト Kimiaki Ishizuka's Homepage「身辺雑記」より抜粋 |
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大熊宏俊 自営業 とべ、クマゴロー! | |
*ウェブサイト ヘリコニア談話室より抜粋 |
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岡崎武志 古本ライター | |
*ウェブサイト 均一小僧の古本購入日誌より抜粋 |
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川崎賢子 文芸評論家 | |
わたしたちの時代の闇はますます深い。 |
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喜国雅彦 漫画家 喜国雅彦の「本棚探偵の囁き」 | |
「異論」よ起これ 「乱歩と不木の書簡が本になる」と聞いたときに、はたしてそれだけで場がもつのか? という疑問がわきましたが、なるほどこういう方法があったのかと感心しました。読後、望んだことはただ一つ。今後、この本を(邪馬台国論争のような)知的遊戯として楽しむために、ぜひとも「異論」の登場を望みます。 |
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今日泊亜蘭 作家 | |
* 編者・浜田雄介聞き書き |
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日下三蔵 ミステリー研究家 | |
推理小説に興味のある人で、江戸川乱歩の名を知らない人はいないだろう。本格ミステリから怪奇小説、少年ものから評論まで幅広く手がけ、国産ミステリの基礎を築いた巨人だ。その乱歩が「二銭銅貨」でデビューを果
したときに推薦文を寄せたのが、探偵小説通として知られた医学博士の小酒井不木であった。 *『週刊大衆』二〇〇四年十二月二十七日号より抜粋 |
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倉阪鬼一郎 怪奇小説家 | |
二〇〇四年十二月三日 (金) これはむちゃくちゃ面白い。本文もさることながら、詳細を極めた脚注も秀逸。ロンブローゾなどの勘どころを周到に押さえているばかりでなく、手紙の文章の意図が那辺にあるかと推理した部分も切れ味がある。P79の「有無を言わせず乱歩を承諾させる詰めの王手」には思わず笑ってしまった。 *ウェブサイト Weird World より抜粋 |
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小二田誠二 静岡大学助教授 小二田研究室の頁 | |
CD―ROMに感激! CD―ROMには、本当に感激です。文字列検索→画像(サムネイル)一覧→閲覧(画像・翻刻セット)という仕組みは、影印が欠かせない近世以前の書籍や、近代の自筆原稿などを出版する場合のスタンダードになっていくのではないでしょうか。乱歩・不木、ないしは『新青年』や探偵小説に特に関心がなくても、近代小説史の大きなうねり、メディア史の中での作家・編集者の動向が見えて興味をそそります。 |
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小林文庫オーナー ウェブサイト小林文庫主宰 | |
本邦探偵小説誕生の現場に立ち会う幸せ! 二十一世紀に、本邦探偵小説誕生の現場に立ち会うことのできる幸せ!乱歩、不木の探偵小説への情熱を受け継いでゆきたい、と思わずにはいられません。 | |
沢田安史 SRの会 | |
一読、日本の探偵小説の草創期に立ち会っているとおぼしき臨場感がある。乱歩と不木、ふたりの巨人が楽しそうに文通 していることに、八十年の時を隔てて眩暈すら覚えてしまう。さらには、本文と脚注のコラボレーション、ここに極まる。資料としても、読物としても言うことなし。願わくば、ほかの書簡も出てこないかなあ。 |
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島村 匠 作家 | |
値段を見てびっくりですが、増刷されたのにもびっくりです。腰巻の書簡引用部分はなんだかできすぎというか、こういう往復書簡だからこそ一冊にまとめる価値があるというアピールにぴたりですね。物書きにとっては、嘘でもこういうことを言ってくれる人がいてくれるかどうかは切実だったりします。 |
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新保博久 ミステリ評論家 | |
インターネツトの掲示板等で下卑た応酬をしてゐる輩は、須く本書を読んで魂を浄化す可し。 |
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千街晶之 ミステリー評論家 | |
どんな宝石も、研磨した石をどのように加工するかによって、商品として成功作にも失敗作にもなる。『子不語の夢』は、乱歩と不木が互いに宛てた書簡という稀有な宝石を、見事に加工してみせた例で、編者の腕前をいくら称賛しても称賛しすぎるということはない。
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高原英理 文芸評論家 アナベル・フィステ | |
それにしてもここまで精密なご本とは、ひとつひとつ注を読むのが楽しくてしかたありません。むろんそれにとどまらず、これは明らかに歴史に残るものでありますし、文化事業とはこのような形で行われるべきであるという見本を見せていただいた気がいたします。 |
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竹本健治 作家 | |
この度はずれた膨大な脚注を見よ!!! |
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田村七痴庵 『彷書月刊』編集長 | |
世に文人作家は数あれど頭に大がつくのはただ二人。大谷崎と大乱歩である。その乱歩誕生に関わる本書は奇蹟のように生まれた乱歩不木の往復書簡集。ほぼ八十年前からの二人のやりとりの熱は不木逝去の昭和四年でおわる。それから七十五年、今次昭和の大戦をもくぐりぬ け、よくぞ散逸もせず二人の書簡は相寄る魂のごとく一冊となってここにある。その秘密の扉を開くことは、二人の生の声を聞くこと、ため息をも感じることができる。 |
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垂野創一郎 読者 | |
書簡から看取される乱歩・不木の人格的な大きさにも心を洗われるような気がするが、本書の読みどころはなんといっても下欄に記されたおびただしい脚注である。該博極まる知識を動員して丹念に(本当に丹念に!)書簡を読みほぐしていくその手際は、正直言って書簡そのものよりも何倍も面
白い。気配りの不木、老獪な雨村、天然な乱歩、あるいは国枝史郎との鞘当てめいた関係、あるいは岩田準一と仲がよすぎる乱歩に対する不木の嫉妬(?)などの人間関係の機微を、この脚注は次々と洗い出していく。(もっとも話が面
白すぎて「これは本当かいな」と首を傾げたくなるところもないではないが。) *ウェブサイト プヒプヒ日記より抜粋 |
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津原泰水 小説家 aquapolis | |
とりわけ葉書の文が佳い。言葉を選んだ時間だけ、相手も繰り返し読んでくれるという、純真な信頼が美しい。血みどろの平成を生きる僕らでも、この書簡集を繙いたその日のうちは、澄んだ眼をしていられる。 |
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戸川安宣 編集者 東京創元社 TRICK+TRAP | |
近頃、これほどスリリングな読書体験は珍しい。ふたりのやりとりが、乱歩の習作発表からプロ作家へと転出する間の機微を克明に炙りだす。そして書簡は、その間、ふたりの関係に微妙な変化が生ずる様をも、赤裸々に暴きだす。この刊行が可能になったのも、乱歩の驚異的な自己収集癖に依るところ大である。この書簡のやりとりがつづくあいだ、乱歩はどれだけ転居を繰り返したことか。にもかかわらず、これだけのものが残されていたのは、まさに乱歩の面 目躍如たるものがある。これを翻刻した労力に、まず敬意を表したいが、綿密な脚注や索引製作等、その編集ぶりには目を瞠るものがある。殊に懇切丁寧な脚注には頭が下がるが、 Carolyne Wells の引用に訳を付けないなど、なかなか意地悪なところもある。初版には当然ながら誤植も散見されるが、みんなで気が付いたところを指摘し合い、より完璧な版を作るべきだろう。この初版には沢山の書き込みをして、三刷か四刷を保存用に購入したいと思っている。ともあれ、そんなことがあったか、と『探偵小説四十年』や『貼雑年譜』、『殺人論』や『犯罪文学研究』などを慌てて繙いた回数が、この書簡集を読む作業のスリリングさを如実に物語る。乱歩のお父さんが晩年、熊野修験にのめりこんでいたとは。研究テーマを一つもらったような気がした。 |
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中村有希 翻訳家 | |
『子不語の夢』には圧倒されました。これだけの本を作るのに、どれほどの根気と努力が必要だったのかと思うとただただ頭がさがります。 |
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濤岡寿子 ミステリ評論家 | |
まずは、江戸川乱歩と小酒井不木という探偵小説の礎を担った作家の往復書簡の出版が実現したということが偉業だが、さらに多方面
に目配りをし、時に脱線しつつも周り巡って解説になるという脚注が秀逸だ。この脚注のおかげで本書は探偵小説の愛好家のものにとどまらず、読書者層を広げることに成功している。乱歩と不木のやり取りに、時にはツッコミを入れるような脚注は実に楽しく、これら脚注は無声映画に命を吹き込む弁士のようである。書簡の欄外で縦横無尽に注をつけつつ論を進めるスタイルは、書簡を事件の遺留品に仕立てた推理小説のようで、書簡、脚注ともに一気読みの面
白さだ。 |
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南陀楼綾繁 ライター・編集者 ナンダロウアヤシゲな日々 | |
書簡を読み進むうちに、乱歩と不木の親交が葛藤に変わっていく。その過程をたどるのがとてもスリリングだった。さらに、「行き過ぎと思われるであろうほどの解釈や推定」にまで踏み込んだ脚注や、詳細な索引、気鋭の研究者による論考が、読書を盛り上げてくれた。封筒の画像まで入れ込んだCD―ROMにも驚嘆。使える資料集のお手本ともいえる本だ。 |
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二階堂黎人 小説家 | |
2004.11.25 おお、まさかこんなものが! と、驚いたのが、『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』である。題名どおり、乱歩と、乱歩の恩師小酒井不木の手紙のやり取りだ。CD―ROMまで付いていて、パソコンにセットすると、往復書簡の内容が映像で見られるのだ。封筒の裏表まで画像として取り込んである凝りよう。それにしても、昔の人は、ずいぶん丁寧な手紙を書いたものだなあ、と、感心してしまう。
*ウェブサイト 二階堂黎人の黒犬黒猫館 「恒星日誌」より抜粋 |
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原田 裕 出版芸術社代表 | |
大変貴重な史料がギッシリつまっていてそれだけで興味深いのですが、同時に本書の構成法、綿密・膨大な脚注等大変なご労作であったと感服いたしております。 私も戦後の二十年代、三十年代には乱歩先生にはさまざまお世話になり、時には将棋のお相手をしたり、紅燈の巷へお供したりと、今思うと、遊んでいただいている合間に小説や随想を頂戴していた事に懐かしさを感じます。先生も、小酒井先生との交流をこんなかたちでまとめてくださる方が出現しようとは思いもよらなかったと思います。おそらく泉下で「よくこんな本作ってくれたな」とお喜びのことでありましょう。 |
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東 雅夫 怪奇幻想文学評論家、アンソロジスト | |
先に言及した『幻の猫』、あるいは『夜窓鬼談』などもそうだったが、今年は中小版元の心意気を感じさせるようなマニア感涙、いや号泣クラスの好企画が相次いだ。次に紹介する二点もその典型である。 『子不語の夢』 小酒井不木と江戸川乱歩―草創期の探偵小説界を先導した両巨人が、不木の急逝で突然の終止符を打つまでの七年間(大正十二年七月〜昭和四年四月)にわたり交わした往復書簡百五十余通 を初めて集成する一巻。ミステリー・ファンはもちろんのこと、広く、黄金期の怪奇幻想文学シーンに関心を寄せる向きにとっても必読の一級資料といえよう。いわゆる怪奇探偵小説の誕生に、フランスの猟奇作家モーリス・ルヴェルの作品が思いのほか大きな影響を及ぼしていたことを再認識させられたのをはじめとして、多くの発見があった。国枝史郎がらみで気になっていた「耽綺社」の実態についても、ナマナマしい記述が散見されて興趣は尽きない。周到な翻刻と解説類、電子資料の利点をフルに活かした附録のCD―ROMの魅力もさることながら、破格に愉快なのが、村上裕徳氏の手になる脚注の知的暴走ぶり。紙背の闇に蠢く人間模様を名探偵よろしく推理するかと思えば、小説よりも奇なる怪人物や怪しいスポットをめぐるトリビアに没頭する……ヘタな小説を凌駕する、これは一個の「作品」である。村上氏といえば、氏が中井英夫の助手を務めていた当時の回想を率直に記した「月蝕領・羽根木時代の思い出」(『『新青年』趣味』第11号掲載)を、『小説推理』の虚無特集編纂中、須永朝彦さんに教示されて、たいそう面 白く読んだばかり。なんでも氏は現在、映画『悪魔の手毬唄』のロケ現場にもなった山梨の某コミューンに食客として居住されている由、なかなかアッパレな当代の怪人ぶりではあるまいか。 *オンライン書店bk1「東雅夫の幻妖ブックブログ」より抜粋 |
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藤原義也 藤原編集室主宰 本棚の中の骸骨 | |
冒頭の数通を読んでいるうちになんだかドキドキしてきた。日本最初のプロ探偵作家・江戸川乱歩誕生の歴史的瞬間を実際に目撃したかのようなスリルを感じる。 *『SPA!』二〇〇四年十二月七日号より抜粋 |
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三浦しをん 作家 Boiled Eggs Online | |
情熱あふれる脚注によって、乱歩と不木の姿が、書簡からより一層リアルに立ちのぼってくるようでした。不木先生、なんだかせつないです! でもそれは、幸福なせつなさでもあると思いました。 |
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森 真沙子 作家 | |
作品と苦闘する乱歩の超人的なストイックぶり、それを献身的に励まし続ける不木の好漢ぶり。二人の間に交わされる真摯な肉声から、探偵小説黎明期の、熱い想いが伝わってきます。乱歩を読み直したくなりました。 |
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山田正紀 作家 | |
小酒井不木があんな若さで亡くなったとは知りませんでした。何とはなしに老大家という印象があったものですから……。いま江戸川乱歩をテーマの一つにしたミステリーを書いています。いろいろと刺激されます。 |
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山前 譲 推理小説研究家 | |
江戸川乱歩が暗号好きであったのは周知の通りである。その乱歩と不木の往復書簡は、ふたつの意味でまさに暗号と言えるだろう。ひとつに読み下すこと。さらにひとつ、字間行間に含まれた意味を拾い出すこと。さて、どこまで暗号解読ができたのか。この書簡集でじっくり確認していただきたい。 |
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書評・新聞による紹介記事 | |
●「乱歩の新たな作家像浮かび上がる 江戸川乱歩、小酒井不木往復書簡集刊行」伊賀タウン情報『YOU』二〇〇四年十一月八日号 ●「名張出身、江戸川乱歩の出世過程示す/交友作家との往復書簡集発刊」『中日新聞』三重版、二〇〇四年十一月十日 ●「乱歩の往復書簡集発刊/探偵小説家への決意記す/乱歩蔵びらき委 小酒井不木との交友収録」『朝日新聞』伊賀版、二〇〇四年十一月十四日 ●清水信『中日新聞』二〇〇四年十二月二一日 ●本多正一「乱歩のはじまり、ミステリーのはじまり」『彷書月刊』二〇〇五年一月号 ●本多正一「『子不語の夢』書評」『文藝』二〇〇五年春季号 【予定】 ●高原英理「評判記」『読売新聞』二〇〇五年一月十九日
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小松史生子 (乱歩書簡翻刻担当) | |
「字は体を表す」―とはよく聞く言葉ですが、このたび乱歩書簡の翻刻を行った過程を振り返りますと、「字は情を表す」とでも言い換えたくなってまいります。『子不語の夢』に収められた書簡が書かれた年代は、大正十一年から昭和四年という、乱歩にとっては激動の時代でした。専門作家デビューを決意するか否か、本格探偵小説と変格探偵小説の論争、そして深刻なスランプによるあてどもない逃避行の旅。三十歳という分別
をわきまえるべき年齢を迎えた頃に、平井太郎という一人の青年を次々と見舞った人生のメルクマールの波。
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阿部 崇 (不木書簡翻刻担当) 奈落の井戸:小酒井不木研究サイト | |
『子不語の夢』で小酒井不木の人柄にしびれたら、次は作品を読んでみましょう。今、書店で入手することができる小酒井不木の著作より、必携の三冊をご紹介します。 ■あなたと不木の相性診断 46『小酒井不木集 恋愛曲線』 ■子供の頃に出逢いたかった? 今からだって遅くない! 47『小酒井不木探偵小説選』 ■芸達者・小酒井不木を解剖せよ 44『人工心臓』
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村上裕徳 (脚注担当) | |
■二〇〇四年八月二日 毎日毎日、『探偵小説四十年』をひっくり返し、あっちこっちを何度も何度も読み返し、そうか、やっぱし乱歩はそういう人だったのか。と、ひとりでうなずいているのですが、その「そういう人」や「やっぱし」がアタマの中ではわかっているのに、言葉にすると、中々説明できない人なんですねえ、これが……。しかし、乱歩っちゅう人は、作品も凄いけど、はるかにはるかに人物の方が巨大な人で、おそらく作品の十倍くらい人間は偉大だった気がしますです。ハイ。戦前だと「陰獣」など、ほとんどの探偵作家負けちゃうわけです。もう、かなわんわけです。戦前なら、横正でさえ、勝てんのです。しかし、「ドグラ・マグラ」や「黒死館」なんかの無差別 級のんをブツケラレルと、乱歩っちゅう人は大変文章書きとしては理性的優等生のために、やっぱり巨大さでは、かなわんのです。乱歩は、がっちり固められた、ほんまもんの長編小説が書けんのです。「千枚の巨編、江戸川乱歩氏の最新作!!」「遂に! 遂に!!待望の、江戸川乱歩、起つ!!! 前後篇 千五百枚の大型巨編」ちゅうのが書けんのです。横正の戦後のやつなら、「八つ墓」とか「獄門島」とか「本陣」なんかをぶつけられると、正史はそうは思ってないでしょうけど、読者としては、ボリュームや迫力や、小説世界のスキマの持ってる「ゆとり」の部分で、乱歩負けちゃうんです。そんなんに勝ったんは乱歩のばあい、正・続の「幻影城」ちゅう乱歩の妄想の「お城」だけなんですね。小説が書けん乱歩が、書けん妄想のすべてをブチコンダ、あの評論集しか夢野や小栗に勝てんのです。しかし、です。書けん乱歩の妄想ちゅうのんが、いかに巨大やったんかっちゅうのんが、よう、読んどったら、見えてくる。紙背におる乱歩ちゅうオヒトが見えてくんです。そこが偉大なトコなんですねえ。 ■二〇〇四年八月十一日 起きてすぐ書いてます。ラストのフィナーレは、考え付きました。使えるかなーと思っとったんがあったんですが、そのため伏線もバラまいとったんですが、何とかイケそうです。驚天動地の意外な犯人です。大どんでん返しになるはずです。小酒井不木殺人事件です。史実的に知ってる人も、仰天する意外な犯人です。×××が×××だったのです。×××が不木をイテモウタから正史はアレが書けたんです |
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末永昭二 (索引担当) | |
ミステリというジャンルに深入りすると、分類や研究がしたくなるものらしい。実作者もアマチュア読者も、ときに評論家・研究家となり、多くの成果
を発表してきた。しかし、生の資料には一部の「関係者」だけしか触れることを許されず、アマチュアは公刊された「作品」(『探偵小説四十年』などの自伝的作品も含む)を基にするしかなかった。
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編集後記 |
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『子不語の夢』に捧げる
2005年1月16日 発行(非売品) |
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