2001.10.15 No32
■■■■■■■■■■■ 皓星社通信 ■■■■■■■■■■■■
隔週刊行(の予定は未定ですが……)
                                    発行所 株式会社 皓星社
                   info@libro-koseisha.co.jp
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いよいよ『庶民烈伝』今秋刊行! 竹中労大特集!!!

● 皓星社おすすめ! 竹中労 関連書籍
   もちろん一番おすすめなのは『黒旗水滸伝』(皓星社)!
   筑摩書房さん、現代書館さんの書籍から、話題の『ペヨトル
   興亡史』に登場する竹中氏までをざっとご紹介。
  
●【エッセイ・竹中父子の横顔】げんこつ親父      備仲臣道

◎編集後記
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☆ 6月刊行のはずが……。遅れに遅れております竹中労著『聞書・
庶民烈伝』。筑摩書房さんから『芸能人別帳』も刊行されて、盛り
上がるはずでありましたが……。お待ちいただいてる読者の方々、
書店様、ご迷惑かけております。いよいよ今秋刊行。もう少々お待
ちください。

☆ その『芸能人別帳』、ウワサでは発売から数週間で増刷したと
いうこと。「ダカーポ」にも竹中氏に関する記事が掲載されて、注
目は集まるばかりです。手元の『芸能人別帳』をめくってみると、
カバーのソデの著者紹介欄に「主な著書に『黒旗水滸伝』『聞書庶
民列伝』(以上、皓星社)」と書いてある……。だからまだ出てな
いってば。
 というわけで、今回は竹中特集。リンク集、著作のご紹介(他社
さんのもあります←太っ腹)などに加えて、おなじみ備仲さんにも
ご登場いただきました。竹中父子の知られざる(?)横顔を綴るエ
ッセイです。
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■■太っ腹企画/竹中労(他社の)関連書籍■■

 「ダカーポ」471号に、いま竹中労が注目を集めているという小特
集が組まれました。亡くなってはや10年、新しい読者も獲得してい
るその著作、古書店では旧著が以前にも増して高値をよんでいると
のこと。「ダカーポ」には、熱心な読者のコメントがいくつも紹介
されていますが、ウチだって負けちゃいられません。
 ここでひとつ、その著作や関連書籍をご紹介。皓星社きっての熱
烈な竹中読者、 営業部 前田のおすすめ本です。
(社名、店名は敬称略)
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 現在まとまって読むことができるのは以下の<ちくま文庫>4点
です。とりわけ『決定版/ルポライター事始』には著作をはじめと
する<竹中労の仕事>が末尾に収められているファン必携の資料。

●『鞍馬天狗のおじさんは』
「日本映画縦断」と同時進行だったと思います。アラカン/嵐寛十
郎の聞き書き。橋本治が「この本に一時救われた」ってどこかに書
いていたのを想い出します。

●『決定版/ルポライター事始』
昨今、新しい読者を獲得したきっかけになった本。「個人情報保護
法案」が秋にも国会を通過しようとしている現在、再び読み返す必
要を感じます。

●『断影/大杉栄』
デモクラティック・ファシズムの来るべき時代に備えるべく用意さ
れた文章。「思想に自由あれ、しかしまた行為に自由あれ、さらに
はまた動機にも自由あれ」。

●『芸能人別帳 』
かつて芸能記事はかくも豊穣であった! 労さんにお会いした時、
この本の底本である「スター36人斬り」の話が出た際「あれは面白
いヨ、俺が読んでも面白いんだから。」っていってましたネ。

いずれも(ちくま文庫)【筑摩書房】です。
<筑摩書房のHP>
http://www.chikumashobo.co.jp/top.html 
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その他に忘れちゃいけない以下があります。

●『フォー・ビギナーズ・シリーズ 31
                 大杉栄(日本オリジナル版)』
           文・竹中 労/絵・貝原 浩【現代書館】

個人的な話ですが、わたしが最初に読んだのはこれです。こんな考
え方もあるんだと新鮮を通り越して呆然としたのを憶えています。
現代書館の菊地さんにお会いした際、この話をしたら、「あれは俺
の担当ダ」とのこと。お礼を申し述べた次第です。

<現代書館・目録リンク>
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN4-7684-0031-0.htm

○『百怪、我ガ腸ニ入ル 』 竹中 英太郎〔画〕【三一書房】
弊社刊『黒旗水滸伝』の表紙装画。竹中英太郎の作品集です。

○竹中労氏の文章は以下でも読むことができます。

『新・代表的日本人(小学館文庫) 』  佐高 信編著 【小学館】
『音の力〈沖縄〉 コザ沸騰編 』
    DeMusik Inter.編【インパクト出版会】
『高橋鉄(新文芸読本) 』【河出書房新社】
『日本の名随筆 別巻9期/日本の名随筆 別巻82 演歌 』
                        【作品社】
『深沢七郎の滅亡対談(ちくま文庫) 』深沢 七郎著 【筑摩書房】

○竹中労氏について書かれた書籍。

『風のアナキスト 竹中労 』   鈴木義昭 著  【現代書館】
『竹中労・無頼の哀しみ 』  木村 聖哉著 【現代書館】
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☆ また、話題の『ペヨトル興亡史──ボクが出版をやめたわけ』
にも、竹中労氏、竹中英太郎氏にまつわる逸話が紹介されています。
『夜想』創刊時に皓星社が発売元だったというご縁で、ウチも載っ
てる! はばかりながら、弊社代表・藤巻も登場。余談ですが、ペ
ヨトル工房主宰の今野裕一氏は、私の母校への進学を目指したもの
の、頭が良すぎて(!)入れなかったらしい。恐れ入りました。

 さて、気になるのは『ペヨトル興亡史』の44頁。京都は三月書房
で弊社の『黒旗水滸伝』を手に取るも、なぜか購入は「思いとどま
った」という今野裕一氏。「文句のない編集」とまでほめていただ
いているのに……。なぜだ!?
 ちなみに、私は三月書房でペヨトル工房の本を購入しました(通
販ですが)。完敗だ。

● ペヨトル興亡史──ボクが出版をやめたわけ
 今野裕一(ペヨトル工房主宰)ほか 著 【冬弓舎】

● 黒旗水滸伝 大正地獄篇 上・下巻 
 竹中労著 かわぐちかいじ画 【皓星社】
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/top03.html

冬弓舎のHP
http://www.thought.ne.jp/
ペヨトル工房のHP
http://www.tctv.ne.jp/members/peyotl/
三月書房のHP
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sangatu/index.html#
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【竹中父子の横顔】
げんこつ親父                                        備仲臣道

 竹中英太郎という人は生涯を貫いてのげんこつ親父であった。少
年時代から喧嘩の絶えない労さんに対し、こちらに理のない時には
徹底して制裁を加えたと言われる。

 旧制甲府中学の生徒だった労さんが、英太郎氏に殴り飛ばされて
二階の階段を転げ落ちたのを、同級生でのちに山梨放送社長になっ
た高室陽二郎氏が目撃してあちこちに書いている。旧甲府城北の御
納戸小路にある竹中家を高室氏が訪れ、玄関を引き開けたとたん、
上の方から黒い固まりが転がり落ちたと見ると、それが労さんであ
った。土間まで落ちそうになった労さんはやっと踏み止まると、玄
関の板の間に平伏して、
「お父さんごめんなさい。お父さんごめんなさい」
  頭をこすりつけて謝ったという。あの、剛直で知られる労さんが
である。
 その時、労さんも、階段の上からまだ燻り立つように怒鳴ってい
る英太郎氏も高室氏の存在にまったく気づかなかった。

 労さんの下の妹の紫さんは、美しい顔をしていながらお転婆で、
庭の柿の木から飛び降りるのが得意であった。ある日、弟の索さん
に真似をさせると、なれない索さんは足をくじいてしまった。
 怒った英太郎氏は紫さんを押入れに閉じ込めたのだが、紫さんは
襖障子を丸く破いてそこから這い出し、けろっとしている。あきれ
た英太郎氏が、
「お前のようなやつは男になってしまえ」
 そう言うと、
「いいよ」
  紫さんは平然としていた。
 そのあとは、バリカンを持ち出した英太郎氏が烈火のようにぶり
ぶりしながら紫さんの頭を一気に刈り上げて青坊主にしてしまった
のである。そうして紫さんと索さんが並んだところは、どちらが姉
か弟か区別がつかないほどであった。

 1950年代半ばの英太郎氏は、戦後すぐに山梨で労働運動を始
めて以来、自身が手塩にかけて育てたはずの県下労働組合の統一組
織を陰謀によってはじき出され、自身言うところの「労働界の孤児」
のような存在であった。だが、不屈の彼は一般合同労働組合連合会
を結成して執行委員長になった。英太郎氏と長年の盟友4、5人が
専従となって、とこう書くとなにやら壮観だが、世間の目からは無
頼の徒と寸分の違いもなかった。組織のない肉体労働者に年末には
「餅代」と称して金一封を配るなどしていたが、日本共産党系の人々
からは「マッチ・ポンプ」と陰口を利かれていた。

 1956年の夏、一般合同労働組合連合会傘下の共同工芸労組で
労働争議が起きた。共同工芸はユダヤ資本で、日本の労使慣行を無
視したやり方は不要の摩擦さえ生み出していた。英太郎氏らが乗り
出しても会社側はこれを無視するような所が見える。

 ある日、東京から帰って親父さんを手伝っていた労さんが、共同
工芸の会社側が労組幹部を旅館へ呼んで抱き込み工作をしていたの
を聞き込んで来た。英太郎・労親子はつれだって会社へ暴れ込んだ。
このため、住居侵入、器物損壊の罪に問われ、仲良く被告席に座る
ことになってしまったのは、いかにもこの親子にふさわしかった。
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 ご執筆いただいた備仲臣道さんは、甲府時代の竹中労氏、お父様
の英太郎氏を知る方。皓星社通信にたびたびお二人の横顔を綴って
いただいてます。
 山梨時事新聞の記者をされていた備仲さんは、1970年まで山梨時
事新聞労働組合書記長を務められました。『甲府中学・甲府一高百
年誌』、『蘇る朝鮮文化』、『輝いて生きた人々』などの著書があ
ります。
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■■関連リンク集■■

☆ 14号のリンク再録。
竹中英太郎を知るには
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/2515/takenaka.html
http://www.inv.co.jp/~naga/takenaka/index.htm

竹中労年譜
http://www.asahi-net.or.jp/~jm7y-trd/Takenaka/nenpu/NENPU.HTM

弊社ホームページの『黒旗水滸伝』関連リンク集。
作品が生まれた70年代を知るサイトから、舞台である大正時代、大
杉栄などの登場人物、もちろん竹中労氏についてまで、さまざまな
サイトを紹介しています。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb1132.html

☆ 著作の書評です。
http://www.siri.co.jp/GENSENKAN/review/G0016.html
http://home.att.ne.jp/gold/drugstore/critics/cr074.htm

☆ 天童よしみの芸名の由来って……。 みなさんご存知でしたか?
http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist2/tendo/profile/profile.html

☆ 小沢昭一・照屋林助・竹中労
http://homebase.axes.co.jp/tokyo/oki/oz1.html

☆ 山梨の風土・文化について
「山梨文藝協会」ホームページ……備仲さんも会員です!
http://fkoktts.hoops.ne.jp/bungei_kyoukai_door.html
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☆ この話題についてのご意見ご感想、情報をぜひ掲示板に!
http://www.libro-koseisha.co.jp/top09/top09.html
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