2001.5. 1 No21
■■■■■■■■■■■ 皓星社通信 ■■■■■■■■■■■■
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◆◆ 皓┃星┃社┃通┃信┃          ◇2001年5月1日号  No21◇
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隔週刊行(の予定は未定ですが……)
                                    発行所 株式会社 皓星社
                  編集長    川尻 絵馬
                166-0004東京都杉並区阿佐谷南1-14-5
              TEL03-5306-2088    FAX03-5306-4125
                   info@libro-koseisha.co.jp
【等幅フォント推奨】     http://www.libro-koseisha.co.jp

━{呼びかけ}━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆ 新刊書店リンク集を増殖させましょう。
コピー、再加工、自由にしてください。
書店さんのHP、アクセスがもうひとつで苦戦していらっしゃる所も
あります。下記を元にどんどん増殖させましょう。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top16/top16.html
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【目 次】
1.判決直前特集
ハンセン病とともに(6),(7)                     谺 雄二

2.皓星社から
  ・またしてもブックレット! 
    5月11日の熊本地裁判決まではちょっとしつこくいきますよ。
  ・ブックレット入手先……都内の書店様ご紹介

◎編集後記
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☆ ハンセン病国賠訴訟判決直前特集! またも谺さんに原稿をお
願いしました。先週刊行したばかりの『詩と写真 ライは長い旅だ
から』も好調です。関係者の方々にできた本をお持ちしたところ、
うれしい反応をいただきました。こんなとき、賛辞をまっさきに聞
くべき著者、編集担当者にちょっと申し訳ない気分にもなります。
営業冥利につきる……のでしょうか。いい思い独占ですみません。
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ハンセン病とともに(6)                            谺 雄二

  2000年11月9日、 私はハンセン病国賠訴訟群馬支援する会の千綿
洋一郎氏に介助されて九州へ向かった。翌10日熊本地裁で行われる
国側証人への反対尋問を傍聴するためである。博多で飛行機を降り
て一泊し、早朝熊本行き高速バスとタクシーを乗り継いで地裁に到
着したのは午前 9時10分。すでに公判前の集会を終えて開廷待ちの
原告仲間や弁護士さんたちと、挨拶を交わす間もなく「整列」の声
がかかり、私も西日本原告団とともに、報道陣のカメラフラッシュ
を浴びながら入廷行進に加わったのだった。その行進中に私は顔な
じみの国宗直子弁護士から、「今日の公判は何時に終わるかわから
ない」という話を聞いた。

 約 100人分はあろうかと思われる傍聴席はたちまち満席になり、
開廷時間の 9時30分をやや過ぎて裁判官が席に着き、すぐに原告側
の反対尋問がはじまった。

  最初の証人は予防法廃止時の厚生省主管課長だった岩尾聡一郎氏
で、彼は被告国側の不当な言い分である「除斥論」にしがみつき、
終始無責任な証言をくりかえした。しかし理に叶った弁護団の尋問
によって、らい予防法見直し検討会でその主管課長としての当然の
任務を敢えて怠り、検討会委員に必要な資料さえ提出していなかっ
た実態などが徹底的に暴露された。

 また2番目の長尾栄治大島青松園副園長は、弁護団の歴とした証
拠に基づく追及をうけてついにたまらず、国のハンセン病政策の過
ちを次々と認める証言を行い、傍聴席の原告団や支援する会の人た
ちからしばしば拍手を送られ、私の席の近くでそれを制止する裁判
所係員の声が、ほとんど聞き取れないほど小さかったのが印象的だ
った。そして最後の今泉正臣星塚敬愛園園長は、これも自ら「らい
予防法は患者を抹殺するもの」と入所者向けに書いたり喋ったりし
ていた事実を弁護団に突かれ、「それは理念上のことだ」と苦し紛
れのわけのわからない答弁や、この訴訟が原告の勝訴になれば「そ
の賠償金によって入所者処遇の枠がくずれる」など、まったく人権
意識の欠如した恫喝そのもの発言などで、裁判長にたしなめられる
醜態をさらした。

 この間、40分ほどの昼食時間と10分ばかりの休憩が数回あっただ
けで、閉廷時の時計の針は午後 8時15分を回っていた。ゆうに11時
間に及ぶこの異例中の異例な公判は、裁判長が異動の前に判決した
い等の事情によるものらしいが、私はこの熊本地裁での原告側反対
尋問を傍聴して、心の底から勝訴を確信したのだった。
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ハンセン病とともに(7)              谺 雄二

 熊本地裁に続いて東京地裁での原告側反対尋問は、同じく昨年の
12月12日に行われた。開廷は通常より30分早い午後1時、そして閉
廷も約2時間延長の午後7時とされたが、しかし熊本に比べ時間的
にやはり不十分であり、その制約のなか弁護団は被告国側の岩尾・
工藤・瀧澤3証人に対する尋問を開始した。

 まず岩尾聡一郎証人だが、彼は弁護団の厳しい追及によって、ら
い予防法見直し検討会の席上、全患協の長瀬会長が、繰り返し国に
謝罪と損害賠償を求めていたことを認め、また主尋問で「原告の国
賠請求権が容れられるようならば処遇の見直しが必要」とした証言
も、廃止法による処遇の維持継続と原告の国賠請求権は何ら関連づ
けられるものでないなど、法廷の場で徹底的に明らかにされた。

 次いで後藤正道証人は、ハンセン病医療や社会復帰支援策の不十
分な実態を認め、ついにはらい予防法の制定を「荒唐無稽」と証す
るなど、前回証言の誤りを正す場となった。そして最後の瀧澤英夫
証人も、彼自身が書いた論文を示されるかたちで、ハンセン病政策
の誤りを個々の事例に則して次々と認め、いわば原告有利の証言に
終始する結果になったが、しかし長年ハンセン病療養所の所長職に
就いていながら「断種、堕胎の真実を知らない」とうそぶく態度に
がまんできず、前回同様退廷する彼に私はやはり怒りの言葉を投げ
つけていたのだった。「人権侵害に時効はないぞ!」。

 この反対尋問が行われた公判から2週間過ぎた12月26日、私は弁
護団事務局より、東京地裁の吉戎修一裁判長が法務省人権擁護局長
に発令され、2001年1月6日付けで裁判長交代との報を受けたので
ある。まさに青天の霹靂どころか、「くそ、汚ねえ手つかいやがっ
て―」が私の実感だった。これまでの裁判の進捗状況からすれば、
吉戎裁判長は原告の訴えを聞く態度も真摯で、とくに栗生楽泉園の
現場検証では「立ち去りがたい思い」とまで発言して原告の証言に
応えてくれていた。こうした吉戎裁判長の心証を感じとった被告国
はその権力によって、しゃにむに吉戎氏の法務省「とりこみ」と裁
判長「さしかえ」を謀ったにちがいないからである。

 そして今年に入って、新しい裁判長に北沢晶氏が就任。当然ハン
セン病問題は未知であろうこの新裁判長に対し、いたずらに判決を
急がせることはきわめて危険という情勢に、私たちは今まざまざと
直面したのだった。

【関連リンク集】
● ハンセン病関係サイト
弊社HPのリンクからまとめてご覧になれます
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb911.html

昨年10月、熊本地裁の裁判官が国立療養所奄美和光園へ出張尋問し
たときの南日本新聞記事。本文中に登場する国宗弁護士の言葉も紹
介されています。
http://www.minaminippon.co.jp/2000picup/2000/10/picup_20001006_3.htm

キリスト教関係のサイトです
http://www.nwjc.ac.jp/te/yamashiro/txt/kirie/5.htm

● 最高裁判所のHP。裁判傍聴の方法なども紹介されています
http://www.courts.go.jp/index.htm
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☆ この話題についてのご意見ご感想、情報をぜひ掲示板に!
http://www.libro-koseisha.co.jp/top09/top09.html
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【皓星社から】
● 毎号毎号しつこいようですが、5月11日の熊本地裁の判決がせ
まっています。皓星社では裁判記録をブックレットにまとめて、微
力ながら支援をしてまいりました。ここであらためてブックレット
新刊をご紹介いたします。

皓星社ブックレット10
『証人調書(2)・「らい予防法国賠訴訟」和泉眞藏証言』
            ハンセン病国家賠償請求訴訟弁護団 編
            
 1999年6月17日・12月17F|$K7'K\CO:[$G9T$o$l$?:[H=5-O?$h$j!"
和泉眞藏氏の証言全文と意見書を収録しています。
             A5判 約180頁 並製 定価800円+税
☆ ブックレット10についてはこちら
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb910.html
皓星社ブックレット11
『詩と写真 ライは長い旅だから』
                  詩・谺 雄二/写真・趙 根在

 1981年の刊行後、絶版となっていた幻の書をこのたび緊急復刊。
谺さんの詩も、趙さんの写真も、訴えかける力がなんとつよいので
しょう。わたくし川尻も圧倒されました。必読!
        A5判 約180頁 並製カバー装  定価1,600円+税
☆ ブックレット11についてはこちら
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb911.html

☆ そのほか、既刊ブックレットもどうぞ
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/top03.html
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ご紹介した皓星社ブックレットは下記書店様で入手できます。「皓
星社の本は手にとって見ないと安心できねえや」という方は、こち
らでご覧ください。

【今回は東京都内の書店様】……文中敬称略
● 八重洲ブックセンター 八重洲本店 2F
東京都中央区八重洲2-5-1 
TEL  03-3281-1811
http://www.yaesu-book.co.jp/

● 模索舎
東京都新宿区新宿2-4-9
TEL 03-3352-3557
http://www.mosakusha.com/

● 美和書店
渋谷区千駄ヶ谷4-25-6
TEL 03-3402-4146

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【編集後記】
● 前号に引き続き、皓星社国賠訴訟関係テレビ・ラジオガイド。
 ・5月11日、判決当日のNHK「あすを読む」でハンセン病国賠
  訴訟を取り上げる予定です。
 ・NHKラジオでも、5月12日の夜「土曜ジャーナル」で放送予
  定。詳細は未定とのことですので、くわしい情報が入りました
  らお知らせします。
 ・テレビ朝日「ニュースステーション」では判決前夜の5月10日
  特集放送です。

● 2001年版図書目録ができました。ご希望の方は下記アドレスか
らお申し込みを。「ご意見欄」に目録送れと入力してください。
http://www.libro-koseisha.co.jp/link01.html

☆ ご意見、ご感想をお寄せください。投稿もお待ちしています。
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