2001.2.6 No14
■■■■■■■■■■■ 皓星社通信 ■■■■■■■■■■■■
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◆◆ 皓┃星┃社┃通┃信┃           ◇2001年2月6日号 No14◇
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隔週刊行(頻繁に増刊の予定ですが……)
                                    発行所 株式会社 皓星社
                  編集長    川尻 絵馬
                166-0004東京都杉並区阿佐谷南1-14-5
              TEL03-5306-2088    FAX03-5306-4125
                   info@libro-koseisha.co.jp
【等幅フォント推奨】     http://www.libro-koseisha.co.jp
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【目 次】
 1.一卵性親子
    ――甲府時代の竹中英太郎さん、労さん     備仲臣道

 2.皓星社から
   ●書店様むけメールマガジン創刊のお知らせ
   ●本邦初! 本格的書店リンク集完成
   
◎編集後記
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☆ 昨年9月の刊行以来、大好評の『黒旗水滸伝』(竹中労 著・か
わぐちかいじ画)。今回は、甲府時代の竹中労さん、お父様の英太
郎さんを知る備仲臣道さんにお二人の横顔を綴っていただきました。
 備仲さんは山梨時事新聞の記者をされていた方。1970年まで山梨
時事新聞労働組合書記長を務められました。『甲府中学・甲府一高
百年誌』、『蘇る朝鮮文化』、『輝いて生きた人々』などの著書が
あります。

☆ 書店様より『黒旗水滸伝』の追加注文をいただきながらのメル
マガ作成。噂をすれば影……ならぬ注文、出版社冥利につきます。
ご注文いただいた皆さま、本当にありがとうございます。

まだまだ好調の『黒旗水滸伝』についてはこちらをご覧ください。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb1132.html
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 一卵性親子                                        備仲臣道

 竹中労さんは私の母校の先輩である。とは言っても彼は旧制中学、
私は新制高校で15年ほどの違いがある。
 私たちの初対面は1969年夏のある日のことで、私は10年勤めた山
梨時事新聞が廃刊になるのに反対して解雇され、ルンプロ同然、妻
子を実家に帰して闘っていた。豆腐一丁で一日の食事を済ませるな
どはごく普通の日々であった。
 
 労さんのお父上・英太郎氏はそうした山時闘争の支援共闘の主要
メンバーであった。彼のカンパはいつも1万円で、直前の私の給料
が3万2000円のころだから巨額と言えた。「どうせ汚い金だ。きれ
いに使ってくれ」と言うのが口癖だった。彼が汚い金を悪どく稼い
でいると言うのではない、銭は汚いというのが彼の思想の中にあっ
た。アナーキズムから来ているものもあったが、没落士族の裔だっ
たという父・友吉氏から受け継いだものが強かったろう。友吉とい
う人は財布から銭を出すのに箸でつまんで決して手を触れなかった
と言われる。

 打ち合わせかなにかがあって労さんが帰省していたのだと思うが、
親父さんと二人で喫茶店にいた時、ガラス窓の向こうを私が通った
のである。
 「おい、あれが備仲臣道だよ」
と英太郎氏は言ったが、それが何者かという説明に数秒を要したた
め、呼んで来いと言われた労さんが飛び出した時には私の姿はなか
った。そのころの私は、警察の尾行がついている時もあり、ひょこ
ひょこと道を変えていたためだったかもしれない。だから、初対面
と言っても面と向かって話をしたのではない。

 私たち後輩に労さんは甲府中学のストライキで有名であった。そ
れは戦後間もない1945年の10、11月に起きている。「甲府中学・甲
府一高百年誌」(同窓会)や「甲一物語」(山梨時事新聞社) はこのス
トライキを、校長と教頭の派閥争いや戦時中の食い物の恨みが原因
としているがどちらも違う。
 
 当時の甲府中学は校舎の大半が焼け、陸軍大学が疎開して来てい
た部分も荒れ果て、校庭は耕されて畑になっていた。授業も多少は
行なわれた程度で、生徒たちには川を隔てて西の練兵場に甲府高等
女学校が引っ越していたことぐらいしか花やいだことはなかった。
戦中の重圧から解放された生徒には諸々の不満が渦巻いていた。ゲ
ートルや挙手の礼が廃止され、皇居遥拝や朝礼もなくなったが、そ
れが不満のガスを抜く安全弁とはならなかった。一方で教師は戦中
の顔ぶれがそのままで、軍国主義を唱えていた同じ口が民主主義を
云々していた。

 10月23日の創立65周年記念式の直後、同窓会長が生徒たちに母校
の現体制を批判する演説をぶったことが突破口を開いた。翌日から
民主化を要求して三、四年生がストライキに突入した。三年生だっ
た労さんは神社の境内や練兵場の集会でつねにリードする立場にい
た。家へ帰れば英太郎氏があれこれと指図したことだろう。11月に
なってストは2年生にも伝播した。学校側は対抗して農繁休暇を繰
り上げ、生徒のエネルギーの分散を図った。
 11月20日ころから闘いは後退局面を迎えた。校長は明年3月辞任
を 表明していた。こうなると雑多な闘う主体の中にも複雑な動き
が生じて来る。裏切りがあったり、相互に醜いけなし合いが始まっ
たりする。労さんは自ら退学した。それは憤死に似ていた。

 そうした先輩に会ったのは二度目が英太郎氏のお別れの会で、三
度目が英太郎作品展の甲府の会場であった。頭を剃り上げて親父さ
んそっくりの風貌になっていた。
 「備仲君。俺が東京へ出ていわゆる一流の人たちと接するように
なって思ったことは、一流というのもこの程度かということだった
んだよ」
 私はその言葉を田舎で燻っている私への激励として聞いた。この
時、労さんはすでに残り時間を計算しながら生きていたのである。
 「一卵生親子」と誰が言ったか忘れたが、英太郎・労の親子には
ともに「見るべきほどのものは見つ」という達観があったように思
う。

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【関連リンク集】
☆ 竹中英太郎を知るには
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/2515/takenaka.html
http://www.inv.co.jp/~naga/takenaka/index.htm

☆ 竹中労年譜
http://www.asahi-net.or.jp/~jm7y-trd/Takenaka/nenpu/NENPU.HTM

☆主な山梨県内発行新聞
明治以来、吸収統合を繰り返してきた山梨日日新聞に最後まで残っ
た山梨時事新聞が廃刊に追い込まれ、県内一紙体制が完成する。 
http://www.lib.pref.yamanashi.jp/kosyu/kyozai/syozo/sinbun.html

☆ 弊社ホームページの『黒旗水滸伝』関連リンク集。
作品が生まれた70年代を知るサイトから、舞台である大正時代、大
杉栄などの登場人物、もちろん竹中労氏についてまで、さまざまな
サイトを紹介しています。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/rb1132.html
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☆ この話題についてのご意見ご感想、情報をぜひ掲示板に!
http://www.libro-koseisha.co.jp/top09/top09.html
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◎お詫びと訂正
前号でご執筆いただいた谺雄二さんを「ハンセン病国賠訴訟原告東
京団長」とご紹介いたしましたが、正しくは「ハンセン病国賠訴訟
群馬県原告団長」、「ハンセン病国賠訴訟東日本原告代表」です。
訂正してお詫び申し上げます。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top03/main03.html#kb
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皓星社から

●書店様向けメールマガジン「皓星社ニューズ レター」創刊!

このたび皓星社では、インターネット上にあふれる情報のなかから
有益なものだけを厳選・編集してお届けする書店様むけメールマガ
ジン「皓星社ニューズ レター」を創刊いたしました。

ピカピカの創刊号は、
 ・丸善店舗とオンライン書店「bk1」が連携
 ・飯島愛“赤裸々本”韓国に輸出
 ・独占禁止懇話会158会議事録概要
 ・アメリカにおける「電子ブック」の動き
 ・雪が降るとネットが儲かる?
ほか、たくさんのサイトをご紹介しています。

 IT化時代とは言っても、多忙な業務をこなしながら、インターネ
ット上で有益な情報を得るのは容易ではありません。「皓星社ニュ
ーズ レター」は書店様に代わって、業界の情報を提供していきます。

ご購読はもちろん無料ですが、弊社刊行物のお知らせもちょっぴり
ございますので、お読みとばし(?)のないようお願いいたします。

登録は「ニューズ レター登録」とご記入の上、下記までお願いい
たします。
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●本邦初! 本格的書店リンク集完成 

書店様のホームページのリンク集を作成しました。このリンクは、
おそらくは初めての新刊書店様の本格的なリンク集で、約350店
の書店様をご紹介しています。 WEB構築のご参考や情報収集などに
ご活用ください。
http://www.libro-koseisha.co.jp/top16/top16.html

新しくホームページを開設した書店様、ぜひご連絡ください!
上記リンク集でご紹介させていただきます。

ご連絡はこちらまで。
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☆ 皆様のご意見ご感想、情報をぜひ掲示板に!
http://www.libro-koseisha.co.jp/top09/top09.html
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【編集後記】

● 本をほとんど読まない生活を送ってきた夫が、引っ越しで通勤
時間が長くなったため、文庫本を持って出勤しています。今では出
版社勤務の私より読書量が多くなってしまいました。そのラインナ
ップが、司馬遼太郎、ガルシア・マルケス、サルトル、向田邦子、
ウィリアム・モリス、筒井康隆……。渋いというか、めちゃくちゃ
というか。次はなにを読むのでしょうか。「これがおススメだよ」
と言いたい気持ちをおさえつつ、読書人生のスタートを見守ってい
ます。いい女房だなあ(自画自賛)。
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